160円でJRを“大回り乗車” 新緑と彩り駅弁、唐揚げそばを味わう12時間杉山淳一の「週刊鉄道経済」GW特別編(2/6 ページ)

» 2018年04月27日 08時00分 公開
[杉山淳一ITmedia]
photo 八高線の電車で北へ

 通勤電車でお客さんも多いけれど、単線だからどこかのんびりした雰囲気だ。小宮駅でちょっと長くとまって、すれ違い電車を待つ。多摩川を渡ると樹木が増えてくる。一戸建てのしゃれた家が多いな。そして、屋根にピーンとアンテナを立てた家が多い。衛星アンテナのパラボラも。ケーブルテレビが普及していない地域のようだ。大きなお世話だね。

 緑が多い住宅街、そんな静かな風景の中で、辺りに線路が増えてくる。拝島駅だ。八高線の他に、青梅線、五日市線、西武拝島線が発着する。八高線は西武拝島線と青梅線の間を進んで停車した。青梅線に乗れば奥多摩や青梅鉄道公園に行ける。五日市線に乗って行ける秋川渓谷もハイキングに良いところ。だけど今回はひたすら電車に乗る。何しろ、目的地は目黒駅だ。

ただ車窓を眺める日帰り旅

 いったい何をしているかというと、乗り鉄を楽しんでいる。何が楽しいかと言えば、車窓の景色は何でも楽しい。ビル群があれば看板を見て、どんな会社があるのかなーと思い、家が見えれば、面白い形だなあ、間取りはどうなんだろう、と思いにふける。樹木があれば青葉を愛でて、花が見えれば花を愛でる。川や山が見えれば、ひそかに盛り上がる。

 難しいことを考えず、流れゆく景色をただ眺めて、ぼーっとする。これがいい。熱帯魚の水槽をなんとなく眺め続けたり、洗濯機の渦をなんとなく見つめ続けたり、たき火の炎を飽きずに眺めたりできる。そういう人に、流れゆく車窓を眺める旅は向いている。退屈しそうだ、と思うかもしれない。そんなときのために、文庫本を持って行く。通勤電車や雑踏のカフェで本を読むと集中できる。それと同じだ。

 電車は東福生を出て箱根ケ崎へ。車窓右手、フェンスの向こうの広い土地は米軍横田基地だ。ここで基地にまつわる歴史とか民間空港転換構想とかは考えない。頭を休めて、広いなあ、飛行機が来ないかなぁ、見えたらラッキー、くらいの感覚でいこう。箱根ケ崎駅はガラス張りの立派な橋上駅舎だ。どこにモノレールの駅ができるのかな。

 金子駅あたりで茶畑が見えて、車窓はますます新緑が増えてくる。新宿駅付近の自然度を1として、ケーブルカーの山頂やわたらせ渓谷鉄道の車窓の自然度を10とすると、このあたりは自然度7くらい。テキトーだけど。何度か森を通り抜けて町に出た。高麗川駅だ。ここで降りる。八高線は八王子と高崎を結ぶ路線だけど、この高麗川で分断されている。八王子側は電化されて川越線と直通運転。高崎側は非電化で、まさにローカル線の風情。

photo 高麗川駅の待合室。ここで食べよう

 さて、次の列車は……なんと、1時間後だ。改札から出られないから、駅の中で過ごすしかない。幸いにもプラットホームに待合室がある。そして他にお客さんはいない。よし、ここで駅弁を食べよう!

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