インタビュー
» 2018年05月14日 09時00分 公開

90周年を機に変わったロングセラー:「キリンレモン」に学ぶ、成功するリニューアルの鉄則 (2/2)

[青柳美帆子,ITmedia]
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 大きなリニューアルを決行するとき、重要なことはなんだろうか。二宮さんは「お客さまの頭の中にある『ブランド像』を棚卸しして、お客さまとの“約束事”を見極めること」と語る。変えてはいけないところは絶対に変えず、それ以外のところは勇気を出してがらっと変える。間違い探しのような変更では、変えていることを気付いてもらえないこともある。「変わったんだな」と思ってもらえることも重要だ。

 「キリンレモンなら、透明感、黄色と青色と水色のブランドカラー、さわやかな味わい、そして長年広告で使用している『キリンレモンのうた』が、アイデンティティでありお客さまとの“約束事”です。そこは変えず、それ以外は今の時代に求められている形にブラッシュアップしました」

「ロングセラー商品」から「定番商品」へ

 大きなリニューアルは新規や離れていた層の獲得を期待できるが、その一方で既存のファンが離れるリスクもある。キリンレモンの場合、これまでのメインターゲットだったティーン層が離れる可能性は大いにあった。

 「もちろん、これだけ変えればお客さまが離れるリスクもあります。ただ、それ以上に新しいお客さまに手に取っていただけるであろう見込みがありました」

 ふたを開けてみると、昨年より数倍の売れ行き。当初ターゲットとしていた20〜30代の男女だけではなく、以前からスーパーでキリンレモンを手に取っていた40代の主婦層にも響いた。懸念だったティーン層も離れていないという。「パッケージのクラフト感がカッコいい」と評判で、InstagramやTwitterに投稿をする人も増えた。

 「一番懸念していたのは、2週目以降の売れ行きです。炭酸飲料は『毎日飲むもの』というよりは『時々すごく飲みたくなるもの』なので、他の飲料と比べて新商品への反応がいいという特性があります。1週目に大きく売れても、2週目にガクンと落ちることが多い。心配していたのですが、キリンレモンは2週目以降も、他の定番炭酸商品に匹敵する勢いで売れている。これまではスーパーが“主戦場”のブランドでしたが、コンビニでも戦えるブランドになったのではと感じています」

 プロモーションに対する反響も大きい。おなじみの「キリンレモンのうた」のメロディラインを生かしつつ、楽曲と歌詞を新たに書き起こし、モデル・女優の佐久間由衣さんと女性アイドルグループのBiSHを起用したCMを制作した。ノスタルジーがあって共感できるストーリーや現代版に生まれ変わった楽曲が受け、再生回数はSNSなども含めれば2000万回を突破している。

プロモーションは新しい「キリンレモンのうた」をアピール
モデル・女優の佐久間由衣さんと女性アイドルグループのBiSHを起用した

 読者のみなさんの中には、「BiSHはよく知らないなあ」という人がいるかもしれない(実は筆者もその1人)。しかしそれは二宮さんの狙い通りだ。

 「キリンレモンのプロモーション予算の8割はデジタルに使っています。今回のCMも、まずデジタルで話題化することを考えました。BiSHはこの間オリコン1位を取り、18年にブレイクが期待できるグループですが、まだお茶の間の知名度が高い存在ではないかもしれません。ですが、マスで話題になる人と、デジタルで話題になる人は違います。BiSHは非常に熱狂的なコアなファンが付いている。彼女たちを応援しているファンの力が、爆発的な再生回数につながったんです」

 有名なタレントを起用すれば話題になるわけではない。二宮さんが「マスとデジタルでの話題の違い」を改めて痛感したのは、17年の9月。歌手の安室奈美恵さんが引退を発表した時、テレビやスポーツ新聞はその話題一色。しかしTwitterのトレンドで1位を取っていたのは安室さんではなく、ゲーム「Fate/Grand Order」のキャラクター「マーリン」だった。

 「私はマーリンというキャラクターを知らなかったので、すごく驚きました(笑)。でもそれこそ、デジタルで盛り上がる話題はマスとは違うということを端的に表しているなと。デジタルのバズを狙いつつ、ブランドの思いをブレずに伝えられる広告を届けるために、キリンレモンのキャラクターである『明るくてさわやか』『自然体なピュアさ』を裏切らず、かつコアなファンがいる人を起用しています」

 炭酸飲料は、夏に向けてニーズが盛り上がり、新商品も増えていく。そんな“戦い”に向けて、二宮さんの思いを聞いた。「キリンレモンはみなさんが知ってくれているブランド。リニューアル以降出荷も好調なので、“毎日どこにいても買える定番ブランド”になることを目指したいですね」

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