少し前、日本を代表する有名がん治療施設2つから「余命宣告」を受けながらも、回復を果たした60代の「がんサバイバー」とお話をする機会があった。
ご本人が匿名を希望されているので本稿では「Aさん」としておくが、このAさんは2013年10月、「原発不明がん」という治療が難しいがんになった。見つけた時は既にあちこちに転移していたということで、担当医から「ステージ4」と診断され、手のほどこしようがない状態だった。
そんな末期がん患者だった方が、いまやピンピンして楽しそうにおしゃべりをしているのも驚きだったが、それよりも衝撃的だったのは、Aさんからうかがった友人の話だった。
Aさんが回復してほどなく、今度は古くからの友人2人が相次いでがんだと診断されてしまった。両者とも進行が早く、医師から「もう効く薬はありません」と非情な宣告をされたという。
そこで、友人らはAさんが行った治療に関心をもった。「余命宣告」から「生還」させたのだから当然だ。調べてみると、自分たちのがんにも効果があるかもしれないという。早速、それぞれの担当医にそのことを申し出た2人だったが、返ってきたのは耳を疑うような言葉だった。
「そういう治療を望まれるのなら、もうここには来ないでいただきたい」
自分の「命」を握られる人にここまで言われて、逆らえるほど人間は強くはない。結局、その希望はかなえられることのないまま、彼らは帰らぬ人となった――。
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