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» 2018年05月15日 08時00分 公開

世界で認められている「免疫療法」が、日本で「インチキ」になる背景スピン経済の歩き方(3/5 ページ)

[窪田順生,ITmedia]

2つの「誤解」が重なったことが大きい

 では、なぜ日本では、中村氏の言う「非科学的」なことが当たり前になっているのか。いろいろなご意見があるだろうが、個人的には「免疫療法」というものに対する、2つの「誤解」が重なったことが大きいと考察している。

 まず、ひとつ目の誤解は、「免疫療法にはエビデンスがない」というものだ。これがいかに「非科学的な言説」なのかということを、20年近く日本で免疫療法の研究や論文発表を行い、Aさんの治療も担当した瀬田クリニックの後藤重則院長が解説する。

 「免疫療法にエビデンスがないというのは事実と異なります。例えば、米国臨床腫瘍学会の論文では、免疫療法に関して6756人の患者さんを対象に18のランダム化比較試験が行われており、免疫細胞療法やワクチンが有効であったと結論づけています。

 これを日本医療機能評価機構が定めたエビデンスレベルに照らし合わせると最高位。他にも信頼のおけるジャーナルに掲載された論文など星の数ほどあります。ただ、全体をみると、医薬品のような製薬会社が行う大規模試験ばかりではないため、どうしてもエビデンスのレベルが低いと言われてしまうだけの話なのです」

 そもそも、エビデンスというものは「あり」「なし」で語られるような単純な話ではない。にもかかわらず、あたかも免疫療法にはまともな臨床試験ゼロ、科学的な論文もゼロという、「印象操作」と言ってもさしつかえない露骨なバッシングが行われているのだ。

 この逆風にさらにダメ押しのような形となったのが、2つ目の「免疫療法は標準治療と相容れないもの」という誤解だ。

 現在、日本のがん治療は、「手術(外科治療)」「薬物療法(抗がん剤治療)」「 放射線治療」という、いわゆる三大治療が主流となっており、「標準治療」と呼ばれている。そのため、免疫療法を行う医師たちは、これらの治療を否定し、まるでその効果に対して頑なに背を向けている「異端の医師」というようなレッテルを貼られることが多いが、前出の後藤院長は、これもまったく「非科学的な話」だと一蹴する。

 「例えば、抗がん剤治療を集中的に行った後に、その効果をさらに引き出すために免疫療法をやるなど、標準治療と免疫療法は連携することも少なくない。事実、私たちのクリニックにも、呼吸器、消化器内科、婦人科、放射線治療科などさまざまな領域で、がん治療を専門にやってきた医師がいますし、東大医学部、順天堂、東京医科大学などの医療機関でも、連携して治療にあたってくれることも少なくない」(後藤院長)

免疫療法を行う医師たちは「異端の医師」なのか

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