東京で約90年前に造られた建造物が「アート」で生まれ変わろうとしている。池袋駅の東西をつなぐ薄暗い通路と、上野に残るかつての駅舎だ。東京五輪が開催される2020年に向けて、古い建造物の価値を高めようとする動きが活発になっている。
池袋駅の北側に、薄暗い歩行者専用通路がある。JR山手線や東武東上線の線路の下を通る、77メートルの通路。構造物は、山手線の環状運行に合わせて、1925年(大正14年)に建設されたとされている。愛称は「WE(ウイ)ロード」だ。
東京都豊島区は、この通路を改修する計画を発表。2019年10月に完成予定だ。そこにアートを取り入れる。
その背景には、老朽化が進むウイロードに付きまとう「暗い・汚い・怖い」というイメージがある。ここは年間1000万人が通行するが、あまり心地よいと言える空間ではない。記者も通ることがあるが、とにかく早く通り抜けたい印象だ。実際に、同区の調査によると、平日の女性利用率は23%程度にとどまるという。
同区の担当者によると、ウイロードの大規模改修は1985年以来。今回の改修では、LED照明を配置したり、鉄道事業者と連携して漏水対策したりする計画だ。
壁や天井には、美術作家の植田志保氏が描くデザインを採用する。「床=現在」「壁=過去」「天井=未来」を色で表現したアートを制作するという。女性を含めて、誰でも安心感を持って通行できるイメージを目指す。
植田氏は、区民と対話をした上で、19年3月〜9月に作品の公開制作を行う。6月8日に区が開いた事業説明会では、区民からさまざまな声があった。
「地域の方から、ウイロードにまつわるエピソードをたくさんいただきました。昔は傷痍軍人の方がいらっしゃって、子どものころは怖い場所だと思っていた、とか。大人になっても、通路を歩くと思い出がよみがえるという方も多く、そのようなイメージを踏まえてリニューアルすることに期待していただいています」(担当者)
きれいに、歩きやすくするだけではなく、ウイロードと地域が歩んできた歴史を感じさせることがリニューアルの大きなポイントのようだ。
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