貿易摩擦で経済リスク、政府内に消費増税慎重論が浮上マインドに悪影響も(2/2 ページ)

» 2018年06月27日 12時34分 公開
[ロイター]
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<関税引き上げで世界貿易6%減少の試算>

経済官庁幹部の間では、国際機関が貿易摩擦の世界経済への打撃度をどのように試算しているかに関心が集まっている。

OECDは、米国・中国・欧州が全ての貿易相手国に対し関税を10%引き上げる措置を実行した場合、世界の貿易量が中期的に6%減少し、世界の国内総生産(GDP)は1.5%減少するとしている(2016年Economic outlook)。

ただ、こうした世界の高関税報復措置合戦が、日本に定量的にどの程度影響するかは「大変複雑で試算はできない」(経済官庁幹部)という。

というのも1つの製品でも、原材料調達から販売先まであらゆる国を経由し、正確な波及経路はつかめないとみられている。

しかも、米国が高関税を実施するまでに時間がかかるだけでなく、高関税をディールの材料とし別の利益獲得を米国が目指す可能性もあり、単純な数式を当てはめることはできない環境だ。

別の経済官庁幹部は「実際の影響よりも、企業や個人のマインドに影響が出てくることで、景気に影響する」と指摘。消費者心理や設備投資マインドも気にかけている。

11月の米中間選挙に向けて、現実に米国がどのような制裁関税や貿易制限措置を発動してくるのか。その程度によっては、世界経済そして中国経済の減速リスクが高まっているかもしれない。

安倍首相やその周辺が、日本経済のリスクを大きく見積もれば、消費増税の実施判断に影響が出る展開も予想される。

(中川泉 編集:田巻一彦)

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