森永のカフェラテが強敵・スタバの「おかげで」売れた秘密コーヒーの味わい深い戦略(2/3 ページ)

» 2018年07月04日 07時00分 公開
[服部良祐ITmedia]

類似商品無く「売り場自体がない」

 しかし、マウントレーニアの売り上げは発売当初伸び悩んだという。最初はCMにハリウッド女優、ジョディ・フォスターさんを起用するなどして高級感のあるイメージを打ち出そうとした。

photo マウントレーニアのマーケティングを担当する森永乳業の並木亜希子さん

 しかし、チルドカップコーヒーという商品自体が初めてだったことから類似商品がなくコンビニにも売り場が無かった。「スーパーのバイヤーもこの商品をどこに置いたらいいか分からなかった」(並木さん)。

 その後、ある程度売り上げを伸ばしてはいたものの、大ヒットに至るには「最後の一押し」に欠けていたマウントレーニア。その意外なきっかけをもたらしたのは同じ“シアトル系”カフェラテのライバル、スタバだった。

 2005年、スタバは初となるチルドカップコーヒーをサントリーと開発、コンビニで発売した。味は「ラテ」と「エスプレッソ」の2つで、まさにマウントレーニアの競合商品。

 「スタバはあのカフェ内で仕事をするのがかっこいい、というイメージがある。ユーザーに『商品を飲むこと自体がおしゃれ』という価値を提供しており、ブランド力は高い」(並木さん)。コンビニなどの売り場でも強力なライバルになると思われた。

 しかし、06年のマウントレーニアの販売本数は初年の9倍、07年には11倍に達した。06年発売の通常品より40円ほど高いプレミアム系商品がヒットしたこともあるが、並木さんはスタバの参入が大きく寄与したと見る。

 「これまでチルドカップコーヒーは売り場も特殊であまり知られていなかった。スタバが参入したことで“対立軸”ができた」(並木さん)。

 当時、新聞でもスタバとマウントレーニアを比較する記事が頻繁に載ったという。「結果、チルドカップコーヒー全体の知名度が急激に上がりトップブランドであるうちが恩恵を受けた。まさにスタバ参入後の06年ごろ、チルドカップコーヒーの市場が確立したといえる」(並木さん)。

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