種類も味も多種多様になったヨーグルト。プレーン味にフルーツ入り、脂肪や糖を減らしたものや機能性表示食品、ドリンクタイプなど。中でもちょっと変わっているのが、最近伸びている「ギリシャヨーグルト」だ。
他のヨーグルトが味や具材、栄養分を変えているのに対し、こちらは製法自体をかなり変更している。水気を切ったりして濃度を上げ、クリーム並みの濃厚さを実現して人気を得た。17年度には約100億円の市場規模にまで伸びた。そのうち55%を占めるトップブランドが森永乳業の「濃密ギリシャヨーグルト パルテノ」だ。
今や明治やダノンジャパンなどの競合もヒットを飛ばしているが、パルテノ以前のギリシャヨーグルトは日本で無名に近い存在だった。構想から7年越しでようやくブレークした背景には、市場を一から開拓するために取った「気長」で、そして「常識の逆を狙う」森永乳業の商品戦略があった。
森永乳業によると、パルテノの商品構想が始まったのは08年ごろ。既に米国で04年のアテネ五輪の影響でギリシャヨーグルトがブームになっていたのに目を付けた。
同社などによるともともとヨーグルトは戦後、小瓶入りのデザートとして食べられていた。大阪万博をきっかけに明治が開発した現在の「ブルガリア」ブランドが大ヒット。各社がフルーツ入りなど工夫を凝らし、特に脂肪分ゼロなど健康面を意識した商品が売れていった。
「健康のためだけでなく、おいしく食べたいという消費者のニーズに応えたヨーグルトも作りたかった」。森永乳業でパルテノのマーケティングを担当する岡田祐美子さんは振り返る。アロエヨーグルトなど具材を工夫した商品に定評のあった同社だが、他社と決定的な差別化を図るためにはヨーグルトそのものを変えようと判断。ギリシャヨーグルトの開発をスタートした。
ヨーグルトの開発期間は、長いものでもせいぜい1年強。パルテノはスタッフがギリシャに渡って伝統的な「水切り」という製法を研究。米国で売っている一般的な商品は日本人にとって脂肪分が高すぎたため、成分を調整するのにもかなり手間取った。結局、発売まで3年かかった。
11年の発売後もなかなかヒットしなかった。そもそも消費者は、日本にほぼ存在していなかったギリシャヨーグルトを知らない。最初はパッケージに載せる商品名も小さくして、逆に「ギリシャヨーグルト」と大きく表示。最初はテレビCMすら使わず、Web媒体や料理家へアピールするなど地味な宣伝に徹して少しずつ知名度が上がるのを待った。
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