15年に果肉ソース入りタイプが人気となり、構想から7年でようやくヒット商品に。あえてあまり増やさなかった商品ラインアップも拡張し、販売地域も全国に広げた。
絶えず新商品を開発しては大々的に売り込み、ヒットしなければすぐ終売する戦略の食品メーカーも少なくない。しかし、森永乳業の別の担当者は「今までにない商品を、ユーザーから理解されないまま売り込んでもブランドは死んでしまう。新参者の商品はなかなか日本市場で生き残れない。ヨーグルトの新市場を切り開くためには(認知度が上がるまで)我慢する必要があった」と解説する。
森永乳業はマーケティングでも従来のヨーグルトとは逆の手法を取った。濃厚な味わいをアピールするため、他のヨーグルトでは一般的な「ヘルシーさ」を強調する戦略は封印。むしろ味や舌ざわりをキャッチコピーに盛り込んだ。
濃厚でお腹にたまりやすいことから、朝食だけでなく間食としての利用シーンも想定。「至福のひととき」といったキャッチフレーズで、あえて夕食後のデザートとして売り込んだ。こうした努力の結果、17年度の売り上げは初年度の15倍にまで達した。
健康ブームを背景に急拡大してきたヨーグルト市場だが、健康志向の商品の人気は一段落しつつある。しかし、「ギリシャヨーグルトはブームを通り越して定番商品になった。特に、(増えすぎた)健康系のヨーグルトにちょっと疲れている人に人気なのでは」と岡田さんは見る。
業界全体が同じブームに沿った商品を売る中、1社だけ逆行する商品を提案・開発することは難しい。しかし、ブームはいつか終わるもの。新たなブームの火付け役となり新市場を開拓するためには、あえてその時のトレンドに逆らう勇気が必要なのかもしれない。
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