葬儀業界に新風 ドウシシャの遺体冷却安置台は何がすごいのか?ドライアイス問題を解決(4/4 ページ)

» 2018年07月06日 06時30分 公開
[大河原克行ITmedia]
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ドウシシャのビジネスモデルは?

 ところで、ドウシシャとは、どんな会社なのだろうか。

 同社は大阪に本社を置く企業で、自社オリジナル商品の企画、開発を行う「開発型ビジネスモデル」と、国内外ブランドや外部メーカーから商品を仕入れて販売する「卸型ビジネスモデル」の2つの柱で事業を展開している。

 開発型ビジネスモデルでは、カモメの羽をヒントに造られた羽根を採用することで、肌あたりのよい風を広い範囲に送ることができる扇風機「Kamomefan」のほか、ふわふわ氷を食べることができるとして人気を博したかき氷機「とろ雪」、ツルスベ効果が持続するフライパンの「evercook」、そして「SANSUI」ブランドのオーディオやテレビもドウシシャの製品だ。また、ユーキャンでお馴染みの「しゃべる地球儀 パーフェクトグローブネオビジョン」も同社の製品である。実は、われわれの身近な商品が少なくない。

肌あたりのよい風を広い範囲に送ることができる扇風機「Kamomefan」 肌あたりのよい風を広い範囲に送ることができる扇風機「Kamomefan」

 こうしたライフ・家電やAVのほか、生活関連、食品・種類、ギフト、時計ブランド雑貨、ブランドバック&ビューティ、ホームリビング、繊維と事業領域は多岐に渡る。

 メモリアルベッドは、生活関連事業に含まれる。葬儀の返礼品ギフトの展開では葬儀業界との関わり合いがあったが、機器での葬儀業界参入はこれが初めてだ。

 メモリアルベッドは、もともとエコテクノが09年に開発した「ECO-COOL(エコクール)」を、ドウシシャが業務を継承して17年10月からビジネスをスタート。正常に冷却されていることを確認するための温度センサーを新たに採用するととともに、外部装置となっていた電源ボックスをベッド本体に内蔵することで移動性や設置性を高めて、ドウシシャのブランドで商品化した。

 メモリアルベッドは、スタンダードタイプ(希望小売価格120万円)のほか、3分割タイプ(同125万円)を用意。同社の国内製造拠点を活用して、葬儀社の要望にあわせたカスタマイズも可能だ。今後、自宅に設置しやすいモデルを追加する予定だ。

 これまでの導入実績は数10台規模にとどまっているが、今後、年間200台を目標に事業を一気に加速させる考えだ。

 「死亡者数が増加しても、家族葬が増加による規模の縮小、ネットベンチャーの参入および情報化の推進による明朗会計化や価格破壊の進展など、葬儀ビジネス市場の規模はほぼ横ばいで推移している。しかも、これまでの専門葬儀社や冠婚葬祭互助会が中心となっていた市場に、霊園や生花などの周辺業種から参入したり、JAや生協、電鉄、ホテルなどの異業種からの参入が増加したりといった動きもある。葬儀業界にとっても差別化できる商材が求められており、メモリアルベッドはその切り札になる」と、同社は販売拡大に意欲をみせる。

 実際、事業を継承した今年1月時点では、ドライアイスにこだわり続けていた葬儀社が、わずか半年を経過した今、メモリアルベッドに関心を寄せているという動きや、一度、メモリアルベッドを導入した企業が追加導入を検討するといった動きが出てきたという。

 「潮目は確実に変わってきている」と中川氏は読む。

 さらに、ペット用のメモリアルベッドを製品化することを発表しており、18年度中にも市場投入する計画である。ここにも大きな需要があると予測する。

ペット用のメモリアルベッドも製品化する ペット用のメモリアルベッドも製品化する

 異業種参入となるドウシシャのメモリアルベッドが、葬儀業界にどんな風を巻き起こすことになるのか。

著者プロフィール

大河原克行(おおかわら かつゆき)

1965年、東京都出身。IT業界の専門紙である「週刊BCN(ビジネスコンピュータニュース)」の編集長を務め、2001年10月からフリーランスジャーナリストとして独立。BCN記者、編集長時代を通じて、25年以上にわたり、IT産業、電機業界を中心に幅広く取材、執筆活動を続ける。現在、ビジネス誌、Web媒体などで活躍。PC Watchの「パソコン業界東奔西走」をはじめ、AVWatch、クラウドWatch、家電Watch(以上、インプレス)、日経トレンディネット(日経BP社)、ASCII.jp(KADOKAWA)、ZDNet(朝日インタラクティブ)などで連載記事を執筆。夕刊フジでは「まだまだスゴい家電の世界」、中日新聞では「デジモノがたり」を連載中。著書に、「松下からパナソニックへ 世界で戦うブランド戦略」(KADOKAWA)、「ソニースピリットはよみがえるか」(日経BP社)、「図解 ビッグデータ早わかり」(KADOKAWA)などがある。近著は、「究め極めた『省・小・精』が未来を拓く――技術で驚きと感動をつくるエプソンブランド40年のあゆみ」(ダイヤモンド社)。

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