同社には「お好み焼きにかけると子どもが喜ぶ」「洗ってずっとこのキャップを使い続けている」といった好評の声が寄せられた。「このキャップはきっといける」(谷川さん)。確信を得て、取りあえず主力商品の450グラムではなく350グラムで新型キャップの搭載を決めた。
しかし、なぜキユーピーは味でなく「使う楽しさ」や「見栄え」といった要素に着目したのか。谷川さんは「キユーピーのマヨネーズは発売90年を越え、特に容器の見直しが必要だと思っていた。容器は中身と同じくらい大事な物」と打ち明ける。
実は、同社のマヨネーズの主要ユーザーは60代。50代がそれに次ぐ。一方で若年層はかなり少ないという。「高校生くらいまでは自宅で母親の作った料理にマヨネーズをかけて食べている。しかしその子どもが大学生になって一人暮らしを始めると、料理をあまりしないので調味料を使わなくなる。しょうゆくらいは使うだろうが、マヨネーズは使ってもらえない」(谷川さん)。
谷川さんは「中高年が主要ユーザーのマヨネーズは何とか手を打たないと縮んでいく市場。若者のマヨネーズ離れは特に課題」とみる。そこで今回、この若者が成長して家庭を持ち始める年代、30〜40代を開拓するターゲットに据えた。「いったんマヨネーズから離れた若者がまた戻ってくるようにしたい」(谷川さん)。
30〜40代はちょうど小さい子どもを育てている年齢に当たる。Instagramにはまっている女性が多めなのもこの年齢層。キャップの穴を増やす上記の2つの理由は、ちょうどこの年代に向けた施策だといえる。
キユーピーのマヨネーズのような、誰もが知る長寿ブランドだからこそ抱える「ユーザーの高齢化」という問題。少子高齢化が進む日本の市場では、メーカー側によるブランドの“若返り”が重要だ。見た目は小さくて浅い、でも深いキユーピーの「穴」に込めた取り組みがうまく“ハマる”か注目される。
ちなみにキャップをよく見ると、横に並んだ3つの穴のうち外側の2つは少し大きく、真ん中だけは小さい。「小さい子どもでもマヨネーズを少ない力で出しやすい仕組みにした」(谷川さん)のだとか。
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