ハワイ火山噴火、科学者が自然に挑む「決死の調査」意気地なしには務まらない(1/3 ページ)

» 2018年07月12日 16時30分 公開
[ロイター]
photo 7月8日、2番目に長い噴火を記録しているハワイ島キラウエア火山は、科学者に過去の噴火よりもはるかに優れた研究機会をもたらしており、「決死の調査」が続けられている。写真は2011年の噴火で溶岩サンプルを集める地質学者。同年3月撮影。提供写真(2018年 ロイター/Courtesy USGS/Handout via REUTERS)

[パホア(米ハワイ州) 8日 ロイター] - 分厚いコットン地の服にヘルメット、ガスマスクを着用した地質学者のジェシカ・ボール氏は、夜間シフトで米ハワイ島キラウエア火山の「亀裂8」を観測していた。同火山の斜面から噴き出る溶岩は15階建ての建物に匹敵する高さだ。

溶岩は数キロ先の太平洋に続く水路に流出。住民がみな避難してゴーストタウンと化したレイラニ・エステーツの不気味なオレンジ色に染まった夜景の中で、溶岩はまるでボール氏に迫ってくるように見える。だがそれは、目の錯覚だと彼女は言う。

「キラウエア火山の活動は、自然の力に挑むとは、どんなことかをわれわれに思い知らせる」と、米地質調査所(USGS)の科学者であるボール氏は話す。

キラウエア火山が2カ月以上前に初めて噴火してから、科学者たちは現地で噴火活動を1日24時間、毎日観測している。USGSの職員やハワイ大学の研究者、そして訓練を受けたボランティアが、2つから5つのチームに分かれ、6─8時間のシフト交代制で働いている。

高熱で溶けてしまうため合成繊維の衣服は避け、鋭い火山岩やガラスから手を保護するためグローブを着用している。また、ヘルメットは降ってくる溶岩から、マスクは硫黄ガスから身を守ってくれる。

意気地なしにこの仕事は務まらない。地質学者は活火山の調査中に命を落とすこともある。

USGSの火山学者デービッド・アレクサンダー・ジョンストン氏は1980年、米ワシントン州のセントヘレンズ山の噴火で亡くなった。また1991年には、米科学者のハリー・グリッケン氏とフランス人の同僚夫妻カティア・クラフト氏とモーリス・クラフト氏の3人が、日本の雲仙岳で調査中に、日本の消防関係者や報道関係者らと共に火砕流に巻き込まれて命を落とした。

カナダ国境に近いニューヨーク州北部にあるニューヨーク州立大学バッファロー校を卒業したボール氏は、キラウエア火山の噴火とナイアガラの滝を比較する。

「力とエネルギーにおいて同じような感じを受ける」と彼女は語った。

       1|2|3 次のページへ

Copyright © Thomson Reuters