overEの洋服は胸の大きさで2種類、身長の高低で2種類、これらを掛け合わせて4種類のサイズが用意されている。こう書くと男性視点ではつい胸を大きく見せるのか、もしくは小さく見せる服なのかと思ってしまう。しかし和田さんによると、胸ではなく「体形全体をほっそりと美しく見えるようにする」のがポイントという。
和田さんによると胸の大きい女性は、そうでない人向けの服を着たときたいてい「太って見える」ことに悩むという。小さすぎるサイズの服では胸を収納しきれず、収納しようと大きめにするとぶかぶかになる。お腹の部分に空間ができてくびれが見えなくなり、本来より太めの体形に見えてしまう。
そこでoverEの洋服は胸の部分を立体的に裁断することで、普通のデザインの服より胸に合うようカーブを付けている。大きな胸を収納するためだ。ただ、和田さんは「これは当たり前の工夫。うちの本当の売りではない」と言い切る。実は、女性ユーザーの服に関する要望をくんできめ細かく商品に反映するのがoverEの真骨頂なのだという。
例えばユーザーから「胸が大きいと二の腕にも肉が付きやすい傾向がある」と声が上がった。そこで現在販売している商品では腕周りに余裕を持たせた。半袖の服についてアンケートを採ると二の腕が見えるのを気にして五分袖を希望する人が多く、実際に商品に反映させた。
和田さんは「胸の大きい女性は体形の見え方について敏感」と指摘する。そうした切実な声をSNSを通じたアンケートや「overE女子会」というユーザー参加イベントなどを通じてくみ取り、商品開発に生かす。そもそも和田さんも他のスタッフも胸のサイズは“overE”というが、 自分の体形や悩みに合わせて商品を作らずあくまで顧客の理解に努めてきたという。和田さんは「お客さまがデザイナー」と言い切る。
胸の大きい女性のニーズにきめ細かく応えているoverE。しかし、決して最初から売り上げは順調ではなかった。当初の月商は約20万円。リピート率は6割と固定客が付いて少しずつ売り上げは伸びていたものの、数人のスタッフを抱える中とてもヒットとまでは言えなかった。
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