これまでのPR手法が通用しない!? アパレル業界が次にとる一手とは(1/3 ページ)

» 2016年08月01日 06時00分 公開
[青柳美帆子ITmedia]

 電車内でスマホをタップし、週末のデートの服を買う――ECサイトを使った買い物は、今ではアパレル業界の“当たり前”になっている。

 しかし10年前には「手に取ってみないと分からない」「店舗での売り上げを食われてしまう」「うちのブランドとよそのブランドをごっちゃに表示するなんて」といった反対意見が優勢だった。

 反対意見を押し切り、業界にいち早く「ケータイでのショッピング」を持ちこんだ人がいる。TOPLOG代表取締役兼CEOの亀山隆広さんだ。亀山さんは2002年、24歳で飲食業界という他業種からファッション業界に入ってきた。

亀山隆広さんが立ち上げたアプリ「TOPLOG」

 「海外に出張に行ってスターバックスに入ると、みんな携帯電話を開いて買い物をしていた。実店舗がショールームになり、インターネットが大きな販売チャンネルになる時代が必ず来ると思った」

 当時亀山さんが立ち上げていたアパレル会社には、10代や20代前半の若いスタッフもいた。「最近は服をネットで買っています」という彼らの声も、亀山さんの背中を押したのだという。

 確信は正しかった。2015年のEC市場規模は13.8兆円まで拡大。5年連続で成長し続けている。“常識”や“反対意見”を打ち破ったところに、新たな突破口がある。また新たなトレンドが生まれ始めているファッション業界について、亀山さんに聞いた。

読者モデルをプロモーションに活用

 亀山さんが自社ブランドで取り入れたのは、「ケータイショッピング」だけではない。「読者モデル」を活用したモデルにも早く取り組んだ。

 90年代は、安室奈美恵などの“カリスマ”がファッションリーダーになっていた。その後に来たのが、渋谷109などで活躍したカリスマ店員。そしてその次が“読者モデル”だ。

 「2000年代前半は『こういう人になりたい!』という強い憧れがファッションを引っ張っていった。それが、04年ごろには、『自分でもなれるんじゃないか?』といった考えが強くなっていった」

 情報に敏感な層は、ファッション誌を読むよりも、好きな読者モデルのブログを見に行っているのだ――そう考えた亀山さんは、新しく入社した社員に「どの読者モデルが有名?」と尋ね、最新の人気を把握。若い層に影響力のある読者モデルに協力を募り、ブログでプロモーションをすることにした。この読者モデルを使ったPRは、アパレル業界の中で一般的になっていく。

 アパレル業界の読者モデルブームは落ち着き、今は自己発信力のある“インフルエンサー”がSNSで台頭してきている。

TOPLOG代表取締役兼CEOの亀山隆広さん。まだ30代ながらアパレル業界に深く関わっている

 ところが最近、インフルエンサーを使ったプロモーションが不振なのだという。

 「ブランドも人も、昔よりもパワーがなくなっている。消費者が熱狂的に夢中にならない」と亀山さんは語る。昔は「この人になりたい!」と思って猛烈に情報を集めていた層が、誰か1人に入れこまなくなってきている――という感覚があるのだそう。

 「Instagramのフォロワー数が40万人いる人に商品を宣伝してもらっても、爆発的に売れることはもはや少ないように感じる。みんな自分のタイムラインで、気に入ったものをまんべんなく見るようになった」

 ブログや雑誌は「自分から見に行くもの」だが、TwitterやInstagramは「自分のところに流れてくるもの」。そうしたUIの違いも、消費者の感覚に反映されている。

       1|2|3 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.