“ダメ男を見抜くゲーム”はなぜ生まれた? 恋愛アプリで売上106億円・ボルテージの新機軸(1/4 ページ)

» 2016年06月24日 08時00分 公開
[青柳美帆子ITmedia]

 「ボルテージ」という東証1部上場企業がある。1999年に創業し、2010年に上場。2014年には売上高100億円を突破し、今も成長を続けている。

 同社が手掛けるのは、ターゲットを女性に絞った“恋愛ドラマアプリ”(恋アプ)。自分のタイプのイケメンと、好みのシチュエーションを選択しながら理想の恋愛ストーリーが楽しめる――というものをメインコンテンツとし、女性向けモバイルコンテンツの世界で圧倒的な存在感を示している。

 そんな同社が昨年リリースした、一風変わったスマートフォンゲームアプリがウケている。タイトルは「ダウト〜嘘つきオトコは誰?〜」。ボルテージが得意とする「ドラマチックな恋愛ストーリー」をベースにしたゲームだが、他の同社作品とは違い、相手のうそを見破る「ダウトパート」という謎解き要素があるのだ。

2015年9月にリリースされたスマートフォンゲームアプリ「ダウト〜嘘つきオトコは誰?〜」。恋愛×謎解きがウケて大ヒット(C)Voltage

 甘い言葉で口説いてきたイケメンの中には、実はマザコンや借金やDVなどの大問題を抱えている“ワケあり物件”が紛れ込んでいる。証拠を集め、誰が“地雷”か見極めて“ダウト”(証拠)を突き付けるのがダウトパートだ。激しく動揺し汗をダラダラ流すイケメンを追い詰めて切り捨てる――人気シリーズ「逆転裁判」にも似た爽快感が女性にウケ、昨年9月のリリース後すぐに話題になった。筆者(25歳女性)もニヤニヤしながら楽しんだ1人だ。

 アプリ(Android/iOS)は200万ダウンロードを突破し、今年にかけての同社の売り上げをけん引するビッグタイトルに成長した。……しかしちょっと待ってほしい。ボルテージはイケメンとのキラキラした恋愛を描き、女性に夢を見せてきた会社だ。

 それなのになぜ、夢を壊しかねない“リアルなダメ男”をテーマとしたゲームを作ったのか? 同社に狙いを聞いた。

ユーザー層の拡大を狙った“謎解き要素”

 そもそもダウトは何を目指して生まれたゲームなのか。その答えは単純明快で、“これまでの恋アプとは異なるユーザー層の拡大”なのだという。同社は恋アプを80タイトル以上リリースしており、累計利用者数は2016年1月31日をもって5000万人を超えるなど順調だが、さらに発展を狙った。

 「恋アプのメインターゲット層は、これまでボルテージのゲームを遊んできてくれた20代後半から30代前半の女性。『ダウト』は、より幅広く、20代前半〜中盤の女性やまだボルテージのゲームを遊んだことがないユーザー層に届けたい。こうした層にアピールするためには、恋愛だけではなくプラスアルファの要素が必要」(同社パーソナル第1コンテンツグループの堀井実希さん)

 そこで出てきたのが「謎解き要素」だ。「企画当時、『人狼ゲーム』や『リアル脱出ゲーム』が話題になっていた。恋愛ゲームはそこまでプレイしたことがないけど、謎解き要素があるならプレイしてみようといった層がいるのではないか」(パーソナル第3コンテンツグループの田中健太さん)――という読みがあった。

甘い言葉の裏に隠されたうそを見抜く謎解き要素(C)Voltage

 当時はテレビドラマ『半沢直樹』(TBS)のような、スカッとするストーリーも流行っていた。「ダメな男を成敗するという勧善懲悪要素もウケると思った」(広報部の青山碧花さん)。こうして新作は、同社お得意の恋愛要素に、謎解きと爽快な勧善懲悪を組み合わせた異色の作品として開発が始まった。

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