「東証一部上場企業の創業者にインタビューしてくれませんか」
ある雑誌から、こんな依頼がやってきたのは、2年前だった。私は誰かを取材するとき、できる限り情報を調べていくことにしている。このときも当然、調べ始めたのだが、早々に、手が止まってしまった。意外な文言に出くわしたからだ。会社の事業内容に、モバイルコンテンツで恋愛シミュレーションゲームを作っている、と書かれていたのである。
東証一部上場である。年商は約100億円。その事業内容が、恋愛シミュレーションゲームの企画、開発だというのだ。しかも、女性向け。思わず、つぶやいている自分がいた。
「女性向け恋愛ゲームで100億円? そんな会社があるのか……」
だが、ソーシャルゲームの大きなブームもあった。そういうこともあるだろうと思って資料を読み続けていくと、また手が止まってしまった。会社の上場は2010年。ソーシャルブームの大きな波がやってくる前のことなのだ。
しかもそれ以降、売り上げがコンスタントに伸びている。モバイルコンテンツのゲーム市場といえば、浮き沈みの激しいイメージがあった。人気のゲームを送り出して、前年比で何倍もの急激な成長を遂げたかと思えば、次の年にはブームは去り、業績は急降下する。そして別の会社の人気ゲームが新たな覇者となって急成長を遂げる。あえて社名を挙げることはしないが、そんなことがここ数年、繰り返されてきたことは、多くの人が気づいているのではないだろうか。
だが、恋愛シミュレーションゲームを作っているこの会社は違っていた。上場する以前の2006年から毎年コンスタントに売上高を約3割ずつ拡大させているのである。企業の浮き沈み、栄枯盛衰が激しい業界で、右肩上がりの成長を継続しているのだ。
いったい、この会社は何なのか。私は俄然、興味がわいてしまった。社名を、ボルテージという。そして、この会社について書いた拙著『「胸キュン」で100億円』の取材プロセスで、その驚くべき成長の裏側を垣間見ることになるのである。
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