実際に先ほどの決算資料を確認すると、全店舗の合計賃料比率は10.9%となっています。こうして実際の経営数値を見ると同社の優れた経営状況が分かるでしょう。その中でもとりわけ優れているのがFL比率です。特に1杯数百円にもかかわらず原価率を28%程度に抑えられているのはなぜでしょうか? 理由は大きく3つあります。
(1): 大量仕入れによる原価抑制
当然ながらコーヒー豆などの原材料は大量に仕入れることでコストを抑えられます。実際に同社の決算資料を見ていくと、大量仕入れの状況が読み取れます。ここでは「在庫回転日数」という指標を見ていきます。これは会社として保管している原材料などが何日分の営業分かを算出した指標になります。実際に同社の在庫回転日数を計算すると約23日となります。在庫回転日数に関しては、業態や事業規模によっても変わるため、一概に適正値などは言えませんが、一般的な飲食店ではどんなに長くても10日以内となります。
こうして考えるとこの23日というのはかなり長い数値です。つまり、「大量に在庫をストックしている」=「大量仕入れを行っている」ということです。仮に個人店の飲食店が23日分もの在庫をストックしていたら資金繰りなどでかなり苦労します。こうした大量仕入れは大手チェーンの資本力があってこそできることでもあります。
(2): 高付加価値商品の販売
皆さんもスタバで一度はシーズン商品を飲んだことがあると思います。その代表が「フラペチーノ」です。今ではすっかりおなじみとなったこのフラペチーノですが、他のコーヒーチェーンでは販売されていません。なぜかというとこのフラペチーノという商品名は、「フラッペ」と「カプチーノ」から生まれた造語であり、スタバの登録商標となっているからです。つまりフラペチーノはスタバでしか飲むことができません(もちろん類似品はあります)。
そしてこのフラペチーノの価格を見てみると、現在販売されている「加賀 棒ほうじ茶 フラペチーノ」の値段は620円(税抜、以下同)です。ドリップコーヒーがショートサイズで280円ですので、スタバの中でも高単価商材と言えます。
スタバでは12年夏より季節限定フラペチーノを販売しており、現在においても革新的な季節限定のフラペチーノを販売する事を重要戦略として位置付けています。こうした付加価値が高い、他店にはまねできない高単価商品を次々に投入できることも、客単価アップや原価率抑制、粗利額アップに効果を発揮しています。
(3): ドリンク売上比率の高さ
スターバックスコーヒージャパンとの比較として、ドトールなどのチェーンを展開するドトール日レスホールディングスの原価率を確認すると41.1%となっています(18年2月期)。これにはドトール以外の業態も含まれているので、ドトール業態単体の原価率を公表していた08年の決算資料を確認すると、ドトール業態の原価率は49.3%ですが、スタバの原価率は28.3%です。では、なぜ同じコーヒーチェーンでありながら、これだけ原価率に差があるのか?
これはスタバに限ったことではありませんが、一般的なコーヒー店、カフェ店においてはドリンクの売上比率が店舗の原価率抑制には重要となります。通常はフードメニューや、物販メニューはドリンクメニューに比べ原価率が高くなります。実際にスタバのアイテム別の売上構成比を確認すると。下記の表となります。
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