初の打ち上げ射場も 大転換を迎えた英国の宇宙産業宇宙ビジネスの新潮流(2/2 ページ)

» 2018年08月24日 07時55分 公開
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英国発の打ち上げサービスベンチャーも

 小型衛星分野のリーダーを目指す同国にとって、打ち上げサービスも戦略投資分野だ。小型衛星を打ち上げる需要は近年高まっているが、その手段は限られている。その解決策として小型ロケットの開発が世界各国で進んでいるが、英国も名乗りを上げた。

 冒頭のOrbexは英国に本社を構えて、デンマークとドイツに拠点を持つベンチャー企業だ。小型ロケット「Prime」の開発を行っており、その能力は重量100〜220kgの衛星を200〜1250kmの高度へと打ち上げることを想定している。

 今回の打ち上げサービス運用者としての選定により、UKSAより550万ポンドの出資を受けた同社であるが、これまでに累計3000万ポンドの資金調達を行っており、その投資家にはESA(欧州宇宙機関)や欧州を代表するベンチャーキャピタルのSunstone Technology Venturesなど官民が名を連ねる。

UK Spaceflight Programme

積極的な法整備や産業育成策

 このように多方面で動きが活発化している英国産業であるが、法整備や産業育成策にも力をいれている。同国では1986年に宇宙法が制定(2015年に改正)されているが、いわゆる軌道上補償と呼ばれる宇宙空間における衛星同士の衝突事故に係る損害賠償も法律で明文化されるなど他国と比較しても特徴的だ。

 また宇宙ベンチャー育成にも力を入れている。同国では2011年から始まった独自の起業家支援センター「カタパルト」が有名であるが、その支援分野の一つに人工衛星データ利用が位置付けられている。それ以外にも、英国内の宇宙ビジネス育成センターは既に15カ所設置されており、新興企業を増やしたいという思いは強い。このように近年積極的な動きを見せる英国宇宙産業の今後に注目したい。

著者プロフィール

石田 真康(MASAYASU ISHIDA)

A.T. カーニー株式会社 プリンシパル

ハイテク・IT業界、自動車業界などを中心に、15年のコンサルティング経験。東京大学工学部卒。内閣府 宇宙政策委員会 宇宙民生利用部会 委員。日本初の民間宇宙ビジネスカンファレンスを主催する一般社団法人SPACETIDE共同創業者 兼 代表理事。日本発の民間月面無人探査を目指すチーム「HAKUTO(ハクト)」のプロボノメンバー。著書に「宇宙ビジネス入門 Newspace革命の全貌」(日経BP社)。

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