「Amazon効果」が物価動向に影響か価格アルゴリズムがインフレ抑制?

» 2018年08月27日 17時17分 公開
[ロイター]
photo 8月25日、インターネット通販業者の台頭で、商品価格の頻繁な変更と価格設定の収れん性が広がり、インフレ動向に影響を及ぼしている可能性があるとする論文が、世界各国の中央銀行総裁が集まった米ワイオミング州ジャクソンホールでのシンポジウムで発表された。写真は米ネット通販大手アマゾンのロゴ。仏Bovesで8日撮影(2018年 ロイター/Pascal Rossignol)

[25日 ロイター] - インターネット通販業者の台頭で、商品価格の頻繁な変更と価格設定の収れん性が広がり、インフレ動向に影響を及ぼしている可能性があるとする論文が、世界各国の中央銀行総裁が集まった米ワイオミング州ジャクソンホールでのシンポジウムで発表された。ネット通販大手アマゾン・ドット・コムが業界構造の変化をもたらす「アマゾン・エフェクト(効果)」が、物価情勢も左右しているのではないかという。

論文をまとめたハーバード・ビジネス・スクール(HBS)の准教授、アルベルト・カバロ氏は「過去10年間ネットでの競争が激しくなったことで、価格変更の頻度と地域差がない価格の浸透が高まった」と説明した。

カバロ氏は、実店舗とネット通販双方の販売経路を持つウォルマートのような企業が、アマゾンといったネット通販大手にどう対抗するかを研究している。論文では、いずれの企業でもアルゴリズム技術による価格設定が浸透しているほか、インターネットによって価格不均衡が低下したと分析した。

米連邦準備理事会(FRB)の複数の当局者は、ここ数年好景気にもかかわわらず米国のインフレ率が低水準に落ち着いているのは、アマゾンのような企業が全般的に価格を統制する役割を果たしているせいかもしれないとみている。

個人消費支出(PCE)価格指数は今年3月、中銀の2%との目標に6年ぶりに合致した。ただ、多くのエコノミストが予想するような低失業率下でのインフレ加速の兆しは、今のところない。現在の米失業率は3.9%で、米景気は過去2番目の長さで拡大が続いている。

このような環境の中、小売業者はより機敏に対応し、マージンを下げている。カバロ氏によると、ウォルマートは2016─18年の間、アマゾンでも売っている商品の価格をさらに頻繁に変えていた。

ウォルマートは先週、予想を上回る第2・四半期の売上高を発表した。実店舗の来客数が増えた上、ネットでの売上高も増えたためだ。ネット通販の売上高は40%増となり、前期の33%増を上回ったが、マージンは5四半期連続で低下した。

カバロ氏は小売業者が他の要因にも反応しているといい「燃料価格や為替変動、その他価格設定アルゴリズムに影響を及ぼす要因は、これまでよりも早く、かつ大きく小売価格に影響している可能性がある」と結論付けた。

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