“トランプ暴露本”で注目のスター記者から学ぶ「人心掌握術」世界を読み解くニュース・サロン(4/6 ページ)

» 2018年09月20日 07時30分 公開
[山田敏弘ITmedia]

CIAから学んだ「無表情で待つ」

 『FEAR』の中でも、人々はウッドワードに話をしてしまう。ウッドワードは、同著の販促として出演したテレビ番組などで、人から話を聞き出す方法の一端を明らかにしている。

 「(情報を得るには)グーグルで調べているだけではダメだ……。彼らの家に行かないといけない」

 メールや電話だけでなく自宅(現場)に行く。そうしないと本当の情報は得られない。ウッドワードは言う。

 「ある将官の家にアポを取らずに訪れたときのことですが、相手が玄関を開けてね、こちらは銃撃されるんじゃないかと思ったけどね。将官は私を見て、『まだ取材してるのか』という。相手の口調は、本気ですよ。でも、こちらは無表情な顔を決め込んで待つのです」

 この「無表情で待つ」というのは、CIA(米中央情報局)から学んだ手法だと、ウッドワードは語る。というのも、彼は2007年に『ヴェール ―CIAの極秘戦略1981-1987』というCIAに関する本を出版しているし、これまでも取材の過程でさまざまなCIA諜報員などとも接触しており、そうしたところからスパイのテクニックを学んできたらしい。

 ウッドワードによれば、「CIAでは局員に『沈黙が真実を吸い出す』と教えるのです」という。

 「だからこそ、とにかく黙る。そうすれば、相手は話したくなる。この将官も、『中に入れ』となり、何時間か過ごすことになった」

 つまり、何度も足を運び、黙って無表情にじっと相手の言葉を待つことが「あなたがこの本には重要で、こちらは真剣なのです」と伝える方法の一つなのだという。彼はこの沈黙の重要性について、いろいろなところで話をしており、彼の大事な取材テクニックの一つのようだ。

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