“トランプ暴露本”で注目のスター記者から学ぶ「人心掌握術」世界を読み解くニュース・サロン(2/6 ページ)

» 2018年09月20日 07時30分 公開
[山田敏弘ITmedia]

口を割らせる、ウッドワード流の仕事術

 そこでウッドワードについて調べて見ると、そこにはやはり、人に口を割らせるウッドワード流のやり方が存在するらしい。実は、この本の出版に際して、ウッドワードはプロモーションとして米テレビのトークショーなどにも登場しており、「後日談」も話題になっている。そこで出てくる裏事情がかなり面白く、ビジネス界などにも応用できそうなものもあると感じる。そこでウッドワードの“仕事術”に焦点を当ててみたい。

 まずウッドワードがどんな凄腕ジャーナリストであるのかを簡単に説明したい。イリノイ州出身のウッドワードは現在75歳。イェール大学を卒業後に海軍に入って世界を回る。その後地方紙で1年の修行をしてから、ワシントンポスト紙に加わった。米国では日本の新卒採用のように、経験もない人がいきなり全国紙の記者になるケースは多くない。地方などで記者としての修行と経験をしてから、ということになる。ウッドワードもまさにそうだった。

 ウッドワードの名を世に知らしめたのは、1972年の「ウォーターゲート事件」だ。この事件は、当時のリチャード・ニクソン大統領が米民主党の全国委員会本部に盗聴器が仕掛けられた事件に関与したとされ、大統領を辞任することになった1件だ。この話を報じて追及したのがウッドワードと、同僚のカール・バーンスタインだった。

 ウッドワードはこれまで19冊の著作があり、9人の大統領を題材にしてきた。ジャーナリズムの世界で最も権威のある賞「ピュリツァー賞」を2度受賞している。米国のみならず世界で最も有名なジャーナリストの1人だと言っていい。

 彼の本は匿名の情報源も多いが、そのソースがしっかりしていると定評があり、さらに彼の記者としての取材実績も本の信ぴょう性を高めている。ジャーナリストと名乗っている人を評価するには、過去にどれくらいの期間、どんな記事を書いてきたのか、どんな取材をしてきたのかが重要な要素になる(ちなみに、日本にはそういった実績なくジャーナリストと名乗っている人が少なくないので注意が必要だ)。また、得た情報についてもかなり時間をかけて裏付け作業を行っている。それだけに、彼が書いたトランプ本はどんなものなのかと、注目を浴びているのである。

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