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» 2018年09月20日 07時30分 公開

世界を読み解くニュース・サロン:“トランプ暴露本”で注目のスター記者から学ぶ「人心掌握術」 (5/6)

[山田敏弘,ITmedia]

忍耐強く、時間をかけて何度もアプローチ

 ウッドワードはさらに、こんなことも言っている。人から話を聞き出すには「忍耐」が必要だと。どういうことか。

 「みんなから話が聞きたいなら、忍耐強くなければいけない。再びその相手の家を訪ねて行き、また家に入り込むことが必要なのです」

 要は、自分の目的のためには、しつこく相手の家などに通うことが大事なのである。一度で全てを終わらせようとしてはいけない。ただそれには、確かに忍耐が必要になる。

 ウッドワードは続ける。「『何か書類とかノートとか持っていませんか』と聞くのです。文書やノートこそ、話が本当だと証明するものですから。相手は最初、『いえ、いえ、いえ』と言うのですが、3度目の訪問になると、『ああ、たぶん2階に何かあるかもな』となるものなのです。そして2階に行って、3つのダンボール箱を抱えて降りてくる」

 さらに別のインタビューでも、「時間をかけなければ何も得られないでしょう」と語っている。

 こうした話はビジネスシーンでも応用できるかもしれない。初めての交渉相手や、タフな相手なら、忍耐強く繰り返しアプローチする。営業なら、何度も足しげく相手の会社や自宅などに通う。米国最高峰のジャーナリストであるウッドワードですら「また君か」と言われながら自宅を何度も訪れて、初めてうわべではない本当に欲しい情報に触れることができるのである。「撃たれるかも」と思いながらでも、だ。

 ワシントンポスト紙、ニューヨークタイムズ紙、ウォールストリート・ジャーナル紙といった名だたる新聞の記者たちがウッドワードほどの情報を書けない理由も、ウッドワードに言わせれば、こうした粘り強い取材をする時間がないからだという。ウッドワードは、日刊紙の記者は非常に優秀だが、何度も取材相手先を訪問する時間がなく、「『9回目のインタビューをする』なんてことができないのです」と言う。

 ビジネスの世界で言うなら、今日明日の成績またはノルマのために手軽な契約をしようとするあまり、大きな魚を逃しているという感じかもしれない。しかし、ウッドワードは、ビジネスモデルを考えればそれは仕方がないことでもあると語っている。

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