まだ食べられるのに捨てられる「食品ロス」は、わが国では年間646万トン発生している(2015年度推計値、農林水産省調べ)。そのうち、メーカー、流通、小売、外食などの事業者で生じる規格外品、返品、売れ残り、食べ残しなどは357万トンである。2015年における世界の年間食糧援助量は約320万トンであり、わが国の事業者の排出する食品ロスはそれを上回る。
食品ロスは、小売店で販売される生鮮食品や総菜といった鮮度低下が早い商品の問題と思われがちだ。しかし、商品が流通する過程や、飲料や菓子といった賞味期限の長い商品でも食品ロスが多く発生している。
多量の食品ロスの発生は、消費者の生活負担の拡大、逼迫(ひっぱく)する物流の問題などにもつながる。余分な生産は、原材料費、配送費、販促費、在庫費の増加をもたらし、廃棄やリサイクル費用が増加する原因になる。そして、最終的には消費者負担を増加させる。また、人手や物流資源も余計に費やすため、物流現場の逼迫した状況や、物流コスト増加といった問題にも関わってくる。
今回は、食品ロスが発生するプロセスと、対応策について紹介しよう。
食品ロスが発生する要因の1つが売れ残りだ。そもそも、消費者が求める分だけ販売すれば、食品ロスは発生しない。
例えば、生協が各家庭に商品を配達する過程で、食品ロスが発生することは基本的にない。それは、消費者が生協のカタログやチラシを見て商品を選び、注文してから納品するまでに、約1週間の時間的猶予があるからだ。非常に単純化して言えば、受注数量から生協の手持ち在庫を引いた分だけ、生協は納入業者に商品を発注して、数量をそろえ、出荷しているからである。
一方、あらかじめ消費者が買いそうな商品を予測して、店舗で品ぞろえをし、かつ、品切れをなくそうとした場合、売れ残りが生じる。予測には必ず誤差が伴うためである。売れ残りが生じた場合、処分販売(値引きなど)が行われるが、それでも売れ残った在庫は廃棄処分される。
同様に、流通過程でも、店舗に対して欠品することなく商品供給を行おうとすると、必ず安全在庫を持つ必要がある。
それでも、小売店に常時品ぞろえされるいわゆる定番商品であれば、販売実績の蓄積があり、高い精度で予測可能なので、食品ロス発生への影響は軽微だ。一方、1品当たりの取引量が多く、かつ需要予測の難しい新商品や特売商品については、店舗からの発注に対して欠品を起こさないように中間流通で在庫を用意するため、そこで売れ残りが頻繁に発生する。こうして生じた売れ残りが適切に処分販売できないと、返品されたり廃棄されたりする。このため、飲料や菓子など賞味期限の長い商品でも、流通過程において食品ロスが発生している。
これが食品流通で食品ロスが発生する根本的な構図だ。
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