シリアから解放の安田氏に問われる、ジャーナリストとしての“2つの姿勢”世界を読み解くニュース・サロン(3/5 ページ)

» 2018年11月01日 07時00分 公開
[山田敏弘ITmedia]

「無謀」「軽率」だった安田氏

 サミュエルズ氏は「少なくとも戦地に入るなら、米ニューヨーク・タイムズ紙や米CNNテレビ、英BBCテレビなどのように、十分な取材のためのリソース(取材費や人材、機材など)を与えてくれる組織の傘の下で行くのが賢明であるが、それですら殺されたり誘拐されたりするリスクがある」と話す。

 さらに、「フリーランスのジャーナリストならそのリスクは数段高くなる。常にコンタクトできる人や助けを求められる人、当局などに連絡ができる人などは多くないだろうし、担当編集者やテレビ関係者などが常に状況を把握していることは少ない。例えば負傷したり、行方不明になったりしたら、誰が助けてくれるのか。そういう十分に起こり得るケースに備えてバックアップのプランを組んでおかないのは軽率だと言うしかない」と語っている。

 とはいえ、フリーランスは戦場に行くべきではないと言っているのではない。取材に行くなら、最低限、徹底した準備が必要だということだ。

 安田氏は帰国便の中で受けた朝日新聞の取材で「拘束された経緯について教えてください」と聞かれてこう答えている。「案内人がいたが、はぐれてしまった」

 つまり2人だけで動いていた可能性がある。サミュエルズ氏は、「案内人に権威もコネも状況変化を見通す能力もなかったのかもしれない。そういう案内人なら、状況が悪化すれば、裏切って見捨てて逃げてしまうことも考えられる」という。そうならないために、繰り返しになるが、バックアップ体制は用意しておく必要があった、と。この意見にも、筆者は同意する。

photo 「戦地に入る」という判断をするなら、さまざまなケースを想定し、準備を徹底することが必要だ

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