エロ漫画の「研究本」はなぜ有害図書にされたのか 「わいせつ」の意味を問う「エロマンガ表現史」著者に直撃(4/4 ページ)

» 2018年11月02日 07時00分 公開
[服部良祐ITmedia]
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審議する人の“エロリテラシー”が上昇?

――逆に言うと、「これはエロい」と判断されたコンテンツが有害図書に指定される、ともいえるのですね

稀見:昔は、(行政の人に)理解できないものは指定されない傾向にありました。(青少年に)影響がないと思われていたからです。例えば、東京都の指定した有害図書の約6割はBL(ボーイズラブ。男性同士の同性愛を描くジャンル)です。「わいせつだ」といった理由を付けて指定しているわけです。

 でも(BL本を主に読んでいる)腐女子からしたら、一体どのような影響があるのか。読んだことで将来その子はどうなってしまうかといった研究がなされていない。審議委員の方々には理由をちゃんと言っていただきたいと思う。

 しかもBLへの指定が増えたのはここ2、3年です。審議委員の方々が最近、(BLは)「エロい」と思うようになったのではないでしょうか。審議する側の“エロリテラシー”が上がり、(世間と同様に)エロいと思うようになった。彼らと世間の流行とのタイムラグは一説には3〜4年あるといわれています。こういったコンテンツが「不健全」になっていく過程というのも面白いものです。

 日本での「わいせつ」の定義とは、どうしても裁判でしか決まらない傾向があります。法学者の人々にとっても、事件が起きてくれないとわいせつについてを決めるプロセスが働かない。本書の件は有害図書について考えるきっかけになったと思います。

 そしてやはり、「エロ」についての研究を大手を振ってできない世界は不健全だと思います。「不健全とは何か」を考えないことこそ、「不健全」なのではないでしょうか。

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