野球盤で追い求める“本物” 「9コース投げ分け」進化の舞台裏「データ野球」も疑似体験(1/4 ページ)

» 2018年12月17日 07時00分 公開
[加納由希絵ITmedia]

 球を投げて、打つ――。

 そんなシンプルな玩具が世代を超えて愛されている。エポック社の「野球盤」だ。2018年は誕生から60周年となる節目の年だった。

 「子どものころはよく遊んだなあ」という記憶がある人もたくさんいるだろう。だが、大人になってからはあまり触れる機会がないかもしれない。野球盤は60年の歴史を経て、進化を続けている。15年の新モデルからは、ボードの上を転がすだけだった球が空中を飛ぶようになった。

 18年6月に発売した新商品「野球盤3Dエース モンスターコントロール」では、投手が9コースに投げ分けたり、打者がバットを振る高さを変えたりすることが可能。球速と投球コースを瞬時に計測し、電光掲示板に表示する機能も搭載している。

 「本物の野球にいかに近づけるか。それが大きな目標です」と話すのは、同社トイゲーム本部 ゲーム事業部 企画開発室の古田望さん。これまで12年間、野球盤に携わってきた。かつては想像できなかったような機能はどのように生まれたのか。進化の裏側について聞いた。

photo 「野球盤」を担当するエポック社 トイゲーム本部 ゲーム事業部 企画開発室の古田望さん

野球の“本質”から生まれた新機能

 野球盤が歩んできた60年は、エポック社の歴史と重なる。1958年、創業者の前田竹虎氏が同社を設立し、野球盤を世に送り出した。初代の野球盤は月産2000台の大ヒット商品となり、その歴史が華々しく幕を開けた。

 その後、プロ野球選手のイラストやアニメキャラクターが描かれた野球盤が登場。72年には人気漫画「巨人の星」をヒントに開発した“消える魔球”の機能も初めて搭載された。ドーム型、メジャーリーグ、変化球など、各時代のトレンド要素や新しい機能を追加しながら、新商品を出し続けているのだ。

photophoto 初代「野球盤」のレプリカ(左)と、1970年代の「オールスター野球盤」

 古田さんは野球盤の企画から試作、設計、量産まで統括して担当。新商品を出し続けるために大切にしているポイントは一貫している。「野球の“本質”を考えていくと、新しい機能が見えてきます」

 しかし、機能やデザインのアイデアがあっても、簡単に実装できるものばかりではない。古田さんはどのように“進化”を実現させてきたのか。

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