ソフトバンク、売出価格割れの船出 収益懸念でタイミングが悪かった?(2/2 ページ)

» 2018年12月19日 16時04分 公開
[ロイター]
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<ファーウェイ切り替え>

日本政府が中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)[HWT.UL]製品の排除を事実上決めたことも、同社にとっては逆風となる。

政府関係者の1人は「対象は政府調達で、民間に排除要請はしない」と強調するが、ソフトバンクは政府の方針を受け、ファーウェイ製機器を欧州メーカー製に切り替える方針を固めた。

米携帯電話子会社SprintとT-Mobile USの合併計画をめぐる米規制当局による安全保障審査も、ファーウェイ排除の背中を押した。

ソフトバンクは今後、ノキア製機器の導入と併せ、ファーウェイ製機器の切り替えを進めていく方針だが、市場では追加費用の発生に不安も広がっている。

<売出価格を2.5%下回る>

この日の初値は1463円と売出価格1500円を2.5%下回った。相場全体の地合いの悪さに加え、上場直前に相次いだトラブルも投資家の心理を冷え込ませた。

しんきんアセットマネジメント投信・運用部長の藤原直樹氏は「市場の地合いの悪化や通信障害の問題などがネガティブに作用した。IPO(新規株式公開)の環境、タイミングが悪かった」と指摘する。

ソフトバンクが上場にあたり公表した2019年3月期の業績予想は、売上高が前年比3.3%増の3兆7000億円、営業利益は同9.7%増の7000億円、最終利益は同4.8%増の4200億円と増収増益を見込んでいる。

配当性向は85%を目安に、安定的な配当を目指す方針だ。

しんきんアセットの藤原氏は「配当利回りが高いうえ、TOPIX銘柄への組み入れによるパッシブ系ファンドの買い需要もある。株価はある程度は底堅く推移する」とみているが、「1500円を上回ったところでは一定の売り圧力が見込まれる」としている。

これまでソフトバンクは、派手な投資で話題を振りまいているソフトバンクグループ<9984.T>の影で、利益創出については比較的柔軟に対応してきた。しかし、今後は投資家の目も意識しなければならない。

通信網の信頼回復や通信機器の切り替え、政府による値下げ圧力など、対応すべき課題は山積みだ。人工知能(AI)関連など「非通信」事業を育てながら、直面する課題にも対応する困難な道のりが待っている。

(志田義寧 取材協力:長田善行 編集:田巻一彦 石田仁志)

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