僕らのヒーローだったジャッキー・チェンが、世界で嫌われまくっている理由世界を読み解くニュース・サロン(3/4 ページ)

» 2018年12月20日 07時00分 公開
[山田敏弘ITmedia]

中国政府に寄り添う姿勢が批判の的に

 彼は当時、中国の海南島で開催されたビジネスパーソンのイベントに登場し、映画などにおける表現の規制について討論する場で、中国政府をよく思っていない人たちを敵に回すコメントをした。当時の報道によれば、彼は「今、私は混乱しています。自由になりすぎると、今の香港のようになってしまう。混沌としているのです。台湾も混沌としている……徐々に、中国人は規制や支配をされたほうがいいのではないかと考えるようになっています。コントロールされないと、何でもやりたいことをやってしまう」と発言した。

 当時、このコメントは、香港や台湾から厳しい反発が出て、ジャッキーは四面楚歌状態になった。中国政府に取り入ろうとしているのだ、と。確かに当時は、ハリウッドでの映画の成功の後、少しジャッキー人気も落ち着いた時期だった。さらに、経済成長によって中国本土の生活水準も上がってきており、映画市場としてもポテンシャルが高かった。そこを狙ったおべんちゃら発言ではないのかとの指摘もあった。

 ただそのおかげもあって、ジャッキーは13年に中国本土の全国政治協商会議の委員にも選ばれ、これがまた香港で批判を浴びた。さらにこの後、彼は中国を持ち上げるような映画を作り、中国本土で大ヒットを連発した。

 それ以降も中国本土と良好な関係を続けたジャッキーは、中国国内の企業との関係も指摘されている。16年にパナマ文書が弁護士事務所から盗まれて暴露された際に、ジャッキーと中国企業の関係が判明したこともあった。とにかく、本土との関係は良好のようだ。

 だが、その反面、やることなすことが批判されるようになった。18年、オークションの売り上げを寄付するつもりで、中国の障害者向けチャリティ団体に自伝5万部を寄付したときは、健全な男がスタントで成り上がった話を障害者向けに寄付するのはけしからん、と一部の中国人から批判が巻き起こったと報じられている。これはさすがに言いがかりに近いが、とにかく、中華圏では常に文句が飛び交うようになった。

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