森永乳業が「冬のかき氷」を仕掛ける深い理由新たな冬アイスブーム狙う(2/2 ページ)

» 2019年01月04日 08時10分 公開
[服部良祐ITmedia]
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専門店のかき氷ブーム、追い風に

 そこで今回の「蜜と雪」で目指したのは、冬アイスの濃厚さとかき氷系のさっぱり感の両立だった。これまでの商品よりも氷の部分を細かく削り、空気も含ませることで食感をふんわり滑らかにした。かき氷のようなすっきりさを保ちつつ、歯ざわりが柔らかになるようにしたという。さらにその上に抹茶やイチゴ果肉入りの濃厚なソースをかけた。

 一般的な氷菓系アイスが100円前後なのに対し、蜜と雪は160円(税別)。実はこの商品の発売に合わせ、森永乳業のかき氷系ロングセラーだった「100円みぞれ」を終売させた。主に30〜50代の女性向けに、“プチ高級路線”を強化していく。18年10月までの売り上げは計画比6割増で推移している。

photo 蜜と雪のマーケティングを手掛けた森永乳業の尾田京子さん

 冬氷を仕掛ける上で尾田さんが着目してきたのが、やはり女性の間で巻き起こっているかき氷ブームだ。天然氷やソース、トッピングに使う素材にこだわったり、インスタ映えする派手な見た目の物が多い。通年で販売する専門店が増えており、1000円を超えるメニューも珍しくない。

 尾田さんは専門店の高級かき氷のように、季節をあまり問わない高級スイーツのジャンルとして蜜と雪にも商機があるとみる。「専門店のかき氷を再現している訳ではないが、同じように従来のかき氷の概念を覆す印象をユーザーに与えたい」と意気込む。

 一方、新ジャンルの商品故の課題も少なくない。蜜と雪のようなかき氷系に近い商品でプチリッチな路線を取っているものには、赤城乳業(埼玉県深谷市)の「ガリガリ君リッチ」やフタバ食品(宇都宮市)の「サクレスイーツ」があるが、少数にとどまる。小売りのバイヤーへの認知度を上げ、店頭の棚をどう確保していけるかも鍵となる。

 アイス業界ではロッテ、江崎グリコ、森永乳業、明治などが3月からの主力商品の値上げを表明している。原材料や物流費、人件費の高騰が理由だ。市場自体が伸びている一方で、安さや容量勝負の商品だけでは立ち行かなくなりつつある。

 そして冬アイスは特に大人の女性から「自分へのご褒美」用のプチ高級なスイーツとして買い求められてきた、高単価が売りのジャンルだ。「かき氷系は冬に売れない」という業界の通説を覆すべく森永乳業が打ち出した「冬氷」は、冬アイス市場で新たな人気ジャンルを確立できるか。

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