連載
» 2019年01月15日 06時30分 公開

東京オートサロンで友山副社長が語ったエモーション池田直渡「週刊モータージャーナル」(1/3 ページ)

先週開催された「東京オートサロン2019」。初日の朝一番に行われたプレスカンファレンスでマイクを握ったのは、トヨタ自動車の友山茂樹副社長だ。GRカンパニー率いる友山氏が語ったこととは……?

[池田直渡,ITmedia]

 1月11日から13日まで、千葉県幕張市の幕張メッセで「東京オートサロン2019」が開催された。

 個人的には19年のオートサロンの主役はトヨタのスープラ(関連記事)とマツダのマツダ3(アクセラ)だったと思う。

 朝一番に行われたプレスカンファレンスでマイクを握ったのは、トヨタ自動車の友山茂樹副社長だ。友山氏は、入社直後に、当時まだ課長だった豊田章男現社長の直属の部下になり、以後苦楽を共にしてきた腹心である。

東京オートサロン2019のプレスカンファレンスでスープラのレーシングモデルをお披露目し、フォトセッションに臨むトヨタの友山副社長 東京オートサロン2019のプレスカンファレンスでスープラのレーシングモデルをお披露目し、フォトセッションに臨むトヨタの友山副社長

 トヨタの人事力学関係として押さえておいた方が良いのは、豊田社長を中心とした小林耕士副社長と友山副社長の関係だ。豊田社長の元上司であった小林副社長は、トヨタ出身でデンソーの副会長を務め、現在はトヨタの副社長としてボードメンバーのお目付役と目されている重鎮である。社長が言いにくいことを周囲に伝える役目であり、同時に社長に苦言を呈する役目だと言われている。

 一方、友山副社長は豊田社長の親衛隊長であり、章男イズムを高速で具現化していく役割を担っている。あくまでも筆者の個人的見解だと断っておくが、友山副社長率いるGRカンパニーは、豊田社長の夢を叶えるための組織だろう。

コスパとエモーション

 その友山副社長がプレスカンファレンスで話したのは、これからの自動車の話だ。トヨタは東京オートサロンをクルマのお祭りだと位置付けている。もちろんビジネスに全く結び付かないとは考えていないだろうが、基本的にはオートサロンはクルマ好きが集まる場所であり、その世界の一構成員として、お祭りを盛り上げることが主眼なのだと言う。

 実は、1月14日に米国・デトロイトでようやく偽装を外した姿が公開されたスープラも、文脈としては同じところに位置付けられる。友山副社長は言う。「スポーツカーはビジネスとしてはもうかりません。それでも、一生懸命工夫を凝らして、継続していかなくてはなりません」。

新型スープラ 新型スープラ

 スポーツカーではもうからないからと、冷徹なビジネスに徹し、売れるミニバンと軽ワゴンだけ作っていった先がどうなるかは容易に想像がつく。それはここ数年、豊田社長が絶対にそうしないと強く訴えてきた「コモディティ化」への道である。

 コモディティ化とは、別の言い方をすればエモーションの排除だ。エモーションはコスパが悪い。水を1杯飲むのにバカラのグラスを持ち出せば、唇の当たる素晴らしく滑らかで重厚な感触と引き換えに、高価な食器を扱う余計なストレスが発生する。使い捨ての紙コップなら感動もないがストレスもない。モノとしての存在感を極限まで削った、どうでも良いものだからだ。

 そもそも感動だってエネルギーの消耗なのだ。いちいち一喜一憂があればエネルギーを消耗する。だから昨今のように若者たちが「コスパが良いか悪いか」で判断をするようになるとエモーションを排除して「クルマなんて移動の道具」という話になっていく。

 ところが最近、若い人が「エモい」という言葉を使い始めた。明確な意味が確定しているわけではないようだが、語源はエモーションであり、「情動的」であることを示すのだと思う。

 エモいは心の領域の話なので、定量的にロジカルではない。まあ筆者の勝手な想像かもしれないが「コスパ」を目指してどんどんモノの持つ意味性を排除した先に、その味気なさに気付いて、ある種のアンチテーゼとして出てきた感じ方なのではないかと思っている。

 お祭りもスポーツカーも、どちらもエモいの文脈で捉えられるものだ。ユーザーにとっても、メーカーにとってもそれはエモーションの領域なのだ。だからスポーツカーの存在意義を言葉で説明すると「ドキドキ」だとか「わくわく」だとかの言葉に依存せざるを得ない。

 しかし、お祭りは参加してみないと意味が分からないように、スポーツカーは乗ってみないと分からない。机の上で考えるから「俺は公道で暴走しないからスポーツカーなんていらない」という話になるのであって、乗ってみた人だけが、法定速度でゆっくり走ってもそこにちゃんとエモーションがあることが分かるのだ。

 つまりもうからないクルマを作って「体験してもらう」という手順を挟まない限り、エモーションのステージを理解してもらう方法はないのだ。

       1|2|3 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセスランキング
  • 本日
  • 週間

    Digital Business Days

    - PR -