東京オートサロンで友山副社長が語ったエモーション池田直渡「週刊モータージャーナル」(2/3 ページ)

» 2019年01月15日 06時30分 公開
[池田直渡ITmedia]

友山副社長が語るGRの仕事

 という流れを理解していただいた上で、GRカンパニーはトヨタのビジネスの中で何をしようとしているのだろうか?

友山: GRはレースで培った開発手法をベースにトヨタのクルマ作りを改革しています。レースという極限の状況の中では、パワートレーン、電気、シャシーのエンジニア、さらには評価ドライバーもそこに参加して、最短時間で開発を行うのです。それをそのまま市販車開発に持ち込んでいくのです。例えば、資料を作ってクルマのイメージを伝えて企画を通すのではなく、われわれはまずクルマを作ってしまいます。最初からそこにクルマがある。こういうものを生産したい。それを具体的に見せて企画会議を通していくのです。

トヨタのコモディティ化を防ぐためにGRグループを指揮する友山副社長 トヨタのコモディティ化を防ぐためにGRグループを指揮する友山副社長

 筆者はその話を目を白黒させて聞いた。正直な話、最初にクルマがあって、それを見せてプレゼンするという流れがよく理解できない。しかし、友山副社長は本当にそう言ったのだ。極端に言えば、コストと時間を恐ろしく削って、資料作りと等価に比べられるくらいで実物が作れてしまうことになる。さすがにスープラのような車両まるごとの開発をGRが手掛けるケースでは難しいだろうが、通常モデルのGR化であれば、それができてしまうということだろう。

池田: いや本当にそんなことができるのだとしたら、それは自動車におけるアジャイル開発の究極的な形ですね。

友山: そういう言い方もできると思います。

 売り上げ見込みが難しいスポーツカーの場合、いかに短期間に(つまりそれはローコストで)、ハイパフォーマンスなクルマを仕立てていくかが、他の車種以上に問われるはずである。何としてもエモーションを体験させるならその針の穴にラクダを通すような難事業をやって見せなくてはならない。トヨタはレース車両の開発手法をそのまま市販車の開発に持ち込むことでそのやり方を確立した。後に振り返ったとき、それはGRカンパニーの巨大な功績になるかもしれない。

池田: 今回、GRが手掛けた「COPEN GR SPORT CONCEPT」が参考出品されましたが、あれはそういうスポーツカーをローコストで開発し体験させるという考え方にとてもマッチしていると思います。ただ、GRがトヨタ以外のクルマを手掛けるというのは非常に大きな変革だと思うのですが、いかがでしょう?

友山: スポーツカーはやはり台数的には厳しい車種です。ですからアライアンスの中に良い素材があるのであれば、それをより良いものに仕立てていく考え方は必要だと思います。

池田: とすれば、これからダイハツだけではなく、スバルや、マツダ、スズキのクルマをベースにした開発をGRがやると、あるいはやるとまでは言わないまでも視野に入れていくということでよろしいでしょうか?

友山: 視野に入れるという意味ではその通りです。

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