LINE PayやPayPayといった電子マネー事業者が銀行化した場合、既存の銀行の位置付けはどう変わるだろうか。最も可能性が高いのは、一定以上の所得を持った層への特化である。
銀行はこれまであらゆる階層の顧客を相手にしてきたが、電子マネーとの親和性が高い顧客層は、新しい事業者が獲得していく可能性が高い。そうなると銀行は、残高が大きく日常的に銀行を使う顧客に的を絞り、資産運用なども含めた総合的なサービスにシフトする方が合理的である。当然、この顧客層はクレカの保有層と合致している。
ある程度の年収や資産を保有する層にシフトするとなれば、銀行は顧客の選別を一層、強化するだろう。平均残高が大きい顧客ほど各種の手数料が安くなり、豊富なサービスが受けられるようになるはずだ。
逆に言えば、既存の銀行との付き合いを継続する場合、各行に口座をたくさん持って、金額を分散させてしまうと損をする可能性が高い。過度な集中は破たんリスクなどもあるので慎重になった方がよいが、いつも使う銀行に資金を集中し、残高を大きくすることで「優良顧客」になる工夫が必要だろう。
10年後の金融市場は、銀行のサービスを中心に利用する層と、電子マネーのサービスを中心に利用する層に二極化している可能性が高い。
仙台市生まれ。東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に記者として入社。
野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。独立後は、中央省庁や政府系金融機関など対するコンサルティング業務に従事。現在は、経済、金融、ビジネス、ITなど多方面の分野で執筆活動を行っている。
著書に「AI時代に生き残る企業、淘汰される企業」(宝島社)、「お金持ちはなぜ「教養」を必死に学ぶのか」(朝日新聞出版)、「お金持ちの教科書」(CCCメディアハウス)、「億万長者の情報整理術」(朝日新聞出版)などがある。
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