ビジネス面で見ると、アメコミの市場は日本に及ばないのが現実。日本のコミック市場は、紙と電子を合わせると4330億円規模である一方で、アメコミ市場は10億ドル(約1000億円)にすぎない。ただそこから映画化などが絡んでくるとその額はかなり大きくなるが……。中村氏は「金ではなく、日本人の作品として世界で勝負するために立ち上がったのです」と話す。
その野心は世界に向いている。「グラフィックノベルで電子配信を始め、次はクラウドファンディングで書籍化を目指します。その後は、世界に打って出て、世界中に配信を始めるつもりです」
さらに、「日本発でヒーローコミックレーベルを創るところまで行きたいと考えています。今後はアジア人が創るアジア系ヒーローを生み出して、それが世界に広まればすばらしい」と言い、「欧米人が戦略としてつくるアジア系ヒーローではないものを創りたいですね」と意気込む。
日本では、少子化や経済縮小という現象だけでなく、「表現」の世界でもクリエーターたちを萎縮させかねないような締め付けが強くなりつつある。閉塞感すら感じている表現者も多いだろう。そんな日本から、米国が本場のアメコミの世界に打って出る――。そんな挑戦をする日本人を、ぜひ応援したい。
山田敏弘
元MITフェロー、ジャーナリスト・ノンフィクション作家。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でフルブライト・フェローを経てフリーに。
国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』(文藝春秋)『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)がある。最近はテレビ・ラジオにも出演し、講演や大学での講義なども行っている。
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