「日本発アメコミ」の挑戦 アジア系ヒーローは世界で勝負できるか世界を読み解くニュース・サロン(2/4 ページ)

» 2019年05月16日 07時00分 公開
[山田敏弘ITmedia]

ファンを増やすアメコミ、新たな動き

 もっとも、日本人は歴史的にもアメコミになじみがないわけではない。特にアメコミから生まれたキャラクターであるスパイダーマンやバットマンなどはずいぶん昔から日本で受け入れられていた。もっと言うと、日本の漫画家たちもアメコミに影響を受けている人たちが少なくなく、そういう意味では、日本の漫画ファンにもその影響は間接的に及んでいると考えられる。古くは『月光仮面』の桑田二郎、『HEAT-灼熱-』の池上遼一、さらに『AKIRA』の大友克洋や『ウイングマン』の桂正和などもアメコミに影響を受けた漫画家として知られている。

 『アベンジャーズ』の成功など、特に最近、じわじわとファンを増やしている感があるアメコミだが、今、アメコミを日本から世界に発信しようとする動きがある。

 18年5月、日仏合作のアニメーション映画『ムタフカズ』が上映された(日本では10月)。日本では、草なぎ剛や満島真之介、柄本時生といった面々が声を担当し、話題になった。この映画を制作したのは、漫画が原作の映画『鉄コン筋クリート』や『アニマトリックス』の何作かを制作したことで知られる「STUDIO4℃」だ。

 この「STUDIO4℃」はアニメ業界ではよく知られた会社で、04年公開のアニメ『マインド・ゲーム』で文化庁メディア芸術祭アニメーション部門の大賞を受賞、また『鉄コン筋クリート』では、日本アカデミー賞最優秀アニメーション作品賞を受賞している。

photo 「STUDIO4℃」が手掛けた作品(出典:プレスリリース)

 第30回東京国際映画祭やアヌシー国際アニメーション映画祭で上映された『ムタフカズ』は、18年の第46回アニー賞でインディペンデント作品賞の候補にもなっている。アニー賞は、50年近い歴史を誇る「アニメーション界のアカデミー賞」と呼ばれる賞である。残念ながら受賞には至らなかったが、同社のアニメ制作が世界的に高く評価されている証左だといえる。

 そして今、「STUDIO4℃」が、同社としても初となる、新たな取り組みに乗り出しているという。それが、日本発のアメコミなのだ。

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