メーカーで商品の販促を担当するマーケッター。ただ、一口に言ってもその職務内容は業界や会社によってまちまちだ。主にテレビCMやキャンペーンを担当する人もいれば、商品開発の方に深く関わるタイプもいる。技術部門と連携しつつ、日々変化するトレンドや消費者心理をつかむのは一筋縄ではいかない。
森永乳業のマーケティング統括部に所属する益田多美さんは、ソニーから業界をまたいで転職したマーケッターだ。前職ではテレビの4K市場でのシェア確立に貢献。森永乳業でも劣勢だった機能性ヨーグルトの新商品を、前年比3倍の売り上げに成長させた。業界を飛び越えたマーケッターが見いだすマーケティングの“勝ち筋”を追った。
益田さんは大学で物理学を専攻、首席で卒業した後は修士課程まで進んだ“リケジョ”。「理系の知識と人を結び付ける仕事をしたい」と、ソニーにマーケティング部門の枠で入社した。
同社では当初、現場を学ぶために営業で2年間経験を積んだ後、まずウォークマンのマーケッターを担当。その次に任されたテレビのブランド「ブラビア」では、ちょうどフルハイビジョンから4Kに切り替わる時期で、4K市場でのトップシェア獲得に貢献した。
ソニーのマーケティング部門で約5年間活躍した益田さんだったが、「自分の手掛けるプロモーションで一気に市場をひっくり返すこともできる、低価格帯の商品でマーケティングを学びたい」と森永乳業に転職した。
同社では当初、紅茶系飲料のリプトンのマーケティングを担当した。その後は主に乳製品でトクホ(特別保健用食品)といった、同社の素材を活用したプロジェクトでマネジャーを務めた。約3年前からマーケティングを任されたのが、森永乳業で新機軸の商品として期待されていた機能性食品の「トリプルアタックヨーグルト」だった。
健康志向の高まりを背景に、乳業業界では高単価の機能性ヨーグルトが近年、好調で推移してきた。尿酸値が気になる人向けに売り込んだ明治の「明治プロビオヨーグルトPA-3」や、内臓脂肪の減少を助ける効果をうたった雪印メグミルクの「恵megumiガセリ菌SP株ヨーグルト」などが代表的なブランドだ。
ただ17〜18年ごろから、その勢いにも陰りが出てきた。森永乳業によると、19年度上半期の機能性ヨーグルト市場は、前年同期比90%強の売り上げで、頭打ちの傾向にある。「単価の低い商品に消費者が流れているようだ」(同社)。
市場が停滞する中、もともと機能性ヨーグルトでは強いブランドの無かった森永乳業が、シェア奪取に乗り出したのが18年発売の「トリプルアタックヨーグルト」だった。血圧、血糖値、中性脂肪が気になる人向けと、ヨーグルト業界では希少な3種の機能性をうたう。その後機能性表示を取得して名前も変え、19年にリニューアル発売している。
ただ、18年の売り上げは計画比の30%とかなり厳しいスタートに。一体何がいけなかったのか。
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