消費増税で「価格」への注目度が高まっている。原材料費高騰や人手不足などの課題が山積する中、値決めは経営を左右する重要な要素。技術革新によって、需給に応じた変動価格を新たに導入する業界も増えている。値決めの最新事情とは?
連載第1回:なぜ赤字でも安売りするのか? 「失敗する値決め」と「成功する値決め」の違いに迫る
連載第2回:当記事
ビックカメラが「電子棚札」の導入を進めている。電子棚札に商品情報を登録すると、本部の指示を受けて価格が自動で変わる仕組みだ。最初に導入したのは、2018年12月にオープンした「ビックカメラセレクト京都四条河原町店」(京都市)。2月にオープンした町田店(東京都町田市)で、初めて電子棚札を全面展開した。今後も既存店や新店への導入を順次進めていくという。これは、大手チェーンでは珍しい動きといえる。
電子棚札によって店舗のオペレーションはどのように変わったのか。ほぼ全ての商品に電子棚札を付けている店舗を取材した。
「商品を値下げしたものの、値札の張り替えが間に合わずお客さまが帰ってしまうケースがかなりありました」
ビックカメラ イトーヨーカドーたまプラーザ店(横浜市)の大下祐矢店長代理はこう振り返る。これまでは、本部から価格変更の指示があっても、店内に展開するまでに時間がかかっていた。しかし、電子棚札を導入してからは、すぐに価格が自動更新されるようになった。
価格の更新頻度は商品によって異なるが、1日3〜4回程度だという。ビックカメラでは競合他社の価格をリサーチしており、価格の変更は柔軟に行ってきた。ただ、近年はECの台頭もあり、価格の変動が激しくなっている。また、18年からは自社ECサイト「ビックカメラ・ドットコム」と店舗の価格を連動させている。紙の値札を差し替える作業の負担は決して小さくはなかった。
電子棚札とはどのようなものなのか。同店には、手のひらに収まる小さいサイズから、一般的なポケットティッシュ程度のサイズまで3種類ある。それぞれの画面の大きさは、1.5インチ、2.6インチ、4.2インチだ。画面は「電子ペーパー」となっている。画面を書き換える際に電気を使い、書き換えなければ紙のように表示され続けるのが特徴だ。
小さなおもちゃには1.5インチ、大型の白物家電やテレビには4.2インチといったように、商品の大きさに応じて使い分けている。書籍やiTunesカードといったプリペイドカードを除く、ほぼ全ての商品に電子棚札が付いており、その数は数万点以上だという。広報担当者によると、通常の使い方をすれば電子棚札に内蔵されている電池は8〜10年持つという。
電子棚札には、メーカー名、商品名、価格、ポイントサービスなどが表示される。メーカー希望小売価格から値引きしている商品は、「●%引」という記載もされる。大きなサイズの電子棚札には、ビックカメラ・ドットコム上の商品レビュー数と5段階評価も表示される。
たまプラーザ店にある電子棚札には、NFC(近距離無線通信)機能も搭載されている。対応するスマートフォンであれば、ビックカメラ公式アプリを起動して電子棚札にかざすと、ビックカメラ・ドットコムの商品情報やレビューを見ることも可能だ。
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