「宗教行為を定額商品化」と批判されたお坊さん便、仏教団体と和解 “お気持ち払い”導入へ満足度に応じて金額上乗せ

» 2019年11月05日 16時23分 公開
[ITmedia]

 僧侶手配サービス「お坊さん便」を提供するよりそう(東京都品川区/旧社名「みれんび」)は11月5日、同サービスに新しい支払い方法「おきもち後払い」を導入した。これまでお坊さん便は全国一律料金で提供していたが、利用者が満足度に応じて金額を上乗せできる仕組みを追加。初回なら3万5000円〜6万5000円の間で金額を選び、法事や法要が終わってから支払えるようになるという。

photo よりそうが提供している「お坊さん便」(公式サイトより)
photo 「おきもち後払い」の画面。利用者が画面に従って僧侶を評価していくと、最低金額(初回なら3万5000円、2回目以降は4万5000円)に最大3万円(計6万5000円、7万5000円)まで上乗せできる。

 お坊さん便は、菩提寺を持たない人でも、法事や法要などに僧侶を呼べるようにする手配サービス。2015年からよりそうの自社サイトやAmazon.co.jp経由で提供していたが、宗教行為を定額商品として販売することなどに対し、全日本仏教会が反対声明を発表するなど、物議を醸していた。

 よりそうの小野敬明氏(お坊さん手配事業部 部長)は「利用者の利便性向上を考えてAmazonに出品した。実際、そこから利用者の申し込みやお坊さんからの提携申し込みも増えている。しかし、そこからお寺やお布施のあり方といった議論にまで発展したのは予想外だった」と当時を振り返る。

photo よりそうの小野敬明氏(お坊さん手配事業部 部長)

 反対声明を発表していた全日本仏教会とは1年ほど前から話し合いを続けており、お坊さん便についても改めて「宗教者の助けを借りながら死別の悲しみを癒やすためのサービスである」と説明を行ったという。その上で、Amazonへの出品については両者間で「功罪があった」と結論付け、19年10月に提供終了を決定。今回導入したおきもち後払いについては、事前に同協会へ説明を行っており、「Amazonに出品した時のような反発は出ないと考えている」(小野氏)としている。

 おきもち後払いには、ネットプロテクションズの決済サービスを活用。利用者が申し込み時におきもち後払いを支払い方法として選択すると、お坊さん便を利用した後にWebフォームが届く。そこに僧侶の評価や支払う金額、コメントなどを入力して申請すると、請求書が届き、銀行振り込みやコンビニ決済などで支払える。

 利用者は直接僧侶にお金を渡さなくて済むため、急な法事でも慌てて現金を用意する必要がなく、僧侶に不満があった場合も率直な感想をよりそう側に伝えられる。僧侶側も普段は率直な意見を聞きにくい仏事へのフィードバックを得られる上、利用者が上乗せした金額は手数料などを引かれることなくそのまま受け取れるため、品質やモチベーションの向上につながるという。

photo おきもち後払いの仕組み

 また、よりそうは同日、LINE公式アカウントを通じて僧侶の手配を自動化する「お坊さんスマートシステム」の運用開始を発表。利用者が申し込みを行うと、入力された希望日時や場所、宗派などを元にシステムが僧侶のリストを自動生成し、公式アカウントからメッセージを送信する。条件に合う僧侶のうち誰が依頼を受けるかは早い者勝ちで決まり、決定するとよりそうから利用者に連絡が届くようになっている。

photo 「お坊さんスマート手配システム」の利用イメージ
photo 手配システムの仕組み

 これまで2日ほどかかっていた僧侶の手配が数分で行えるようになることで、大幅な業務効率化につながる他、「いつ法事を行えるか分からない」「お坊さんが決まらなかったらどうしよう」といった利用者の不安を軽減できるという。すでに約1300人の提携僧侶のうち7割がLINEを活用しており、今後もよりそうは利用率を伸ばしていく考えだ。

 「これまでは電話のやりとりがメインで、すれ違いやミスも多かった。手配システムを活用することで、正確な情報をやりとりし、トラブルを減らしていきたい」(小野氏)

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