トランプが「ファーウェイ禁輸緩和」に傾いた真相 中国との“チキンレース”の内幕米中貿易戦争の真実(3/4 ページ)

» 2019年11月14日 06時00分 公開
[遠藤誉ITmedia]

中国元高官が明かした意外な内幕

 遠藤はなぜ中国政府の元高官となど直接連絡を取れるのかと疑問に思われる方もおられるかもしれない。また中国政府側の者と話ができるなんて、遠藤は中国政府のスパイにちがいない、などという心ない誹謗中傷を受けることもある。そこで一言ご説明しておきたいと思う。

 私は1941年に中国の吉林省長春市で生まれた。生まれた時の市の名称は「満州国新京特別市」だ。1945年8月15日に日本が敗戦すると、中国(当時は中華民国)では国民党と共産党との間で「国共内戦」(解放戦争、革命戦争)が起き、長春市はやがて共産党軍による食料封鎖にあった。このとき数十万の餓死者を生んだが、私の家族からも餓死者が出て、私は餓死体の上で野宿しながら長春を脱出した経験を持つ(詳細は拙著『チャーズ 中国建国の残火』朝日新聞出版刊)。

 実はこの元政府高官の遠い親戚も長春の食料封鎖に遭っているため、私が書き残しているドキュメンタリーが、真実であることを彼は知っているのだ。中国(現在の中華人民共和国)が一党支配体制を維持するために、自らの汚点である「チャーズ」の事実を公表するのを許さないことも、彼は認識している。だから私が数少ない生存者としてこの事実を訴え続け、中国共産党の言論弾圧を非難している姿勢にも一定の理解を示している。

 理解と言っても、それは「黙認」という形でしかない。私と元政府高官の間柄は、日常の交流において、決してその歴史的事実や政治姿勢に触れることなく、ただ、現在起きている事象に関して、ありのままの内部事情を、許せる範囲内で教えてくれる、という関係に過ぎない。

 その彼は私の質問に対して、すかさず答えた。

  ── 習近平はトランプに、「ファーウェイに対する禁輸を解除しないとG20大阪サミットにおける米中首脳会談には応じない」という前提条件を付けていました。交渉では、先に言った者が敗けますからね。その時点で、勝負はついていたのですよ。もう1つ、米議会公聴会に注目するといいでしょう。

 6月18日の電話会談で「米中首脳会談に応じる」とは言っているが、「ファーウェイ禁輸制裁解除」という「前提条件」を突き付けたのだという。

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