中国が着手した「6G」って何? 5Gから10年先の“覇権”を巡る思惑世界を読み解くニュース・サロン(4/4 ページ)

» 2019年11月21日 07時00分 公開
[山田敏弘ITmedia]
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6Gの世界を予想すると……

 では6Gとはどんなものになる可能性があるのか。米調査会社PSBが米国の企業幹部など3500人に対して行った調査によれば、回答者の91%が「5G時代に生まれる新たな商品やサービスは、現在まだ“考案”すらされていないだろう」と答えている。つまり、10年もすれば、今では想像できないような世界が広がっている可能性がある。

 それにもかかわらず、今の時点で6Gの世界を想像するのは難しい。SF映画に出てくるようなレベルを超える未来を思い浮かべることは容易ではない。

 ただそれに挑戦している人たちもいる。フィンランドのオウル大学は、世界的にも6G研究が進んでいる(関連リンク)。ノーベル賞受賞者や首相なども輩出している同大学は、19年9月に6G時代を見据えた世界初の「6G白書」を発表した。70人の専門家が協力した白書では、6Gの世界を予想している。例えば、1テラバイトを瞬時に扱うようなコンピュータ。また、スマホのようなデバイスでも、VR(仮想現実)やAR(拡張現実)を当たり前のように使えるようになる。さらにそれら全てまとめて実現するXR(エクステンデッド・リアリティ)まで登場し、現実とバーチャルの境界が今以上に薄くなるらしい。白書では、そんな未来を真剣に議論している。

 実は、19年2月には、ドナルド・トランプ米大統領も突然、「5Gだけでなく、6Gもできる限りすぐに米国に欲しい」とツイートして話題になった。当時は専門家から失笑されたが、そのくらいのスピード感は必要なのかもしれない。さもないと、1980年代後半からインフォメーション・ウォーフェア(情報戦争)の重要性を認識して長年5Gを研究し、「中国製造2025」で世界の工場から技術大国への成長を目指してきた中国には太刀打ちできないかもしれない。

 一歩出遅れた日本は、6Gに向けて、中国に負けじと研究を進めるべきではないだろうか。

筆者プロフィール:

山田敏弘

 元MITフェロー、ジャーナリスト、ノンフィクション作家。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でフルブライト・フェローを経てフリーに。

 国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』(文藝春秋)、『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)がある。最新刊は『CIAスパイ養成官 キヨ・ヤマダの対日工作』(新潮社)。テレビ・ラジオにも出演し、講演や大学での講義なども行っている。


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