クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

GRのコペンとダイハツ・コペン池田直渡「週刊モータージャーナル」(2/5 ページ)

» 2019年12月02日 07時00分 公開
[池田直渡ITmedia]

難題を見事に全て解決したアイデア

 そうやってダイハツのアイコンとなったコペンだが、このモデルチェンジは難しい。走りが良くて、丸くて可愛く、オープンでなくてはならない。走りのためにはボディ剛性がいるが、オープンにすればそこがキツくなる。それをカバーできるような都合の良いベースシャシーはもはやない。お尻が丸いボディは空力がひどいことになり、法定速度内でもリヤ荷重が抜けて直進安定性が落ちる場合がある。余談だが、2代目コペンと初代のリヤのリフトを比べると60%も向上している。2代目が凄いだけではなく、初代のリフトがいかにひどかったかということだ。

初代コペンのリアはツルンと丸い

 さて、3つの要素を全部備えたクルマを何とかして作れといわれても「無茶を言うな!」と言いたくなる。この状況を逆転して、モノコックを止めちまえと考えた人は、現代の一休さんだと思う。

 どうせ流用できるシャシーが無いのなら、内骨格式のフレームでいこうというアイディアは強烈だ。まずそんなに数が出るはずのない軽のスポーツカーに、専用シャシーを起こそうと考えることがどうかしている。しかもモノコック全盛というか、特殊なクルマを除けばそれしかない時代に骨格式のフレームを作るという飛躍も凄い。

 つまりはこういうことだ。開発費を回収するためには台数を売らなければならない。しかし、そんなに売れるはずがないクルマだ。となると、長く作るしかない。しかし外板が強度を受け持つモノコックでは、同じデザインのまま売らなければならない。

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