クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

GRのコペンとダイハツ・コペン池田直渡「週刊モータージャーナル」(5/5 ページ)

» 2019年12月02日 07時00分 公開
[池田直渡ITmedia]
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 これはスポーツとは何かという定義によるだろうが、筆者はステアリング以外の要素でクルマの挙動を変えることが運転の醍醐味(だいごみ)だと思うのだ。別に派手にリヤを滑らせるとかそういうことではない。ラインを微調整するためにアクセルやブレーキが効くことが大事なのだ。だから接地感が高く、ちょっとやそっとでは微動だにしないGRはむしろ少し物足りない。だからホイールがこじられてタイヤの接地面がゆがみ、ほんのわずかずつグリップが落ちてくることがステアリングから伝わってくる素のコペンが楽しい。

 では路上へ連れ出すとどうか? という段階でいつものごとくタイヤをチェックすると、なるほど3台そろって「ポテンザRE050」を履いていた。ここではGRはまた違う側面を見せた。スラロームの印象では「ぶっ飛ばさないと面白くないんだろうな」と予想していたが、それは裏切られた。狭くて曲がりくねった先行きの見通せない道では、GRの絶大な接地感は安心感につながる。別に飛ばさなくても正確なステアリングと望外の乗り心地を楽しんで走れる。

 さて、結論をどうするか? これはなかなか難しい。まずクローズドコースでタイムを求める人にはGR一択だ。行きつけの山道で、世間に眉をひそめさせない範囲で楽しく走るなら、素のコペンだと思う。しかしツーリング的に、知らない山坂を旅するような使い方ではGRの信頼感もまた価値が高い。

 もっと下世話な話をするなら、トヨタの店で買えるのはGRだけだ。ダイハツではどれも扱う。そして行き着く所は値段だろう。素のコペンはCVTで税込み189万円、MTで191万円。GRはそれぞれ238万円と244万円。ついでのようで恐縮だが、CVTの出来はかなり良い。逆にこのクルマが楽しい速度域では、MTを選んでも残念ながら変速があまりいらず、シフトを楽しむ機会は多くない。という意味ではCVTを勧める。

 価格の話に戻ろう。趣味のクルマだからコスパでいっても意味はない。予算が足りるか足りないかだ。ただひとついえるのは、素のコペンは予算が足りないから選ぶクルマではなく、積極的に選ぶだけの個性がちゃんとあるということだ。

筆者プロフィール:池田直渡(いけだなおと)

 1965年神奈川県生まれ。1988年企画室ネコ(現ネコ・パブリッシング)入社。取次営業、自動車雑誌(カー・マガジン、オートメンテナンス、オートカー・ジャパン)の編集、イベント事業などを担当。2006年に退社後スパイス コミニケーションズでビジネスニュースサイト「PRONWEB Watch」編集長に就任。2008年に退社。

 以後、編集プロダクション、グラニテを設立し、クルマのメカニズムと開発思想や社会情勢の結びつきに着目して執筆活動を行う。


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