新興メニュー「台湾まぜそば」が爆発的に広がった理由 名古屋めしの新しい活路とは名古屋めしビジネス「勝ち」の理由(3/3 ページ)

» 2019年12月09日 07時00分 公開
[大竹敏之ITmedia]
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“名古屋めしのデパート”で観光客をつかむ、絶好調の外食企業

 名古屋めしは、当連載でも取り上げた「矢場とん」=みそカツ、「あつた蓬莱軒」=ひつまぶし、「山本屋本店」=みそ煮込みうどんなど、専門店がトップブランドとして君臨しているものが多い。それに対して、主要なメニューを網羅した「名古屋めしのデパート」として人気沸騰しているのが、かぶらやグループの「名古屋大酒場 だるま」だ。19年4月のリニューアルで名古屋めし系メニューをより強化し、前年対比で何と140%、3000万円超の売り上げをたたき出している。

かぶらやグループは名古屋市内を中心に居酒屋業態など15店舗を展開。「名古屋大酒場 だるま」は2008年に繁華街・栄のド真ん中にオープンし、19年4月にリニューアル。4フロア183席の大箱がびっしり満席になる

 「当社の店舗はもともと地元のお客さま中心だったのですが、10年ほど前にのれんなどで『名古屋めし』を打ち出すようにしたところ、観光客が気軽に立ち寄ってくれるようになりました」と、岡田憲征社長。近年は特にインバウンドを中心に名古屋を訪れる観光客が増え、それが客数の増加に直結していると分析。加えて、観光客に対するインフラが未整備であることが、逆に飲食店にとってビジネスチャンスになっているという。

 「名古屋に来る外国人観光客にとっては、名古屋めしを食べることが1つのイベント。京都で金閣寺へ行くのと同じようなコンテンツになっています。名古屋は大都市の割にシティホテルが少ないので、多くの観光客が食事が付いていないビジネスホテルを利用することになる。そこでわれわれのような飲食店が受け皿になるのです。観光客はファミリーも多いので、『だるま』は居酒屋でありながら主食にもなる鉄板ナポリタン、ひつまぶし、きしめんなども用意している。土日は特にこれらのメニューのニーズが高くなります」(岡田社長)

 また、多彩な名古屋めしメニューを扱うことで観光客の期待に応えられると岡田社長は言う。

 「名古屋めしには各ジャンルに横綱級の名店がある。しかし、旅行客や団体客らの“一度にいろんな名古屋めしを体験したい”というニーズは確実にある。各メニューの調理スキルを総合的に上げていき、このニーズに応えていけば、名古屋めしの楽しみ方ももっと広げていけると考えています」

鉄板ナポリタン、手羽先の唐揚げ、みそおでんなど名古屋めしメニューを多彩に取りそろえる

 名古屋めしは、種類が非常にバラエティに富んでいるのが特徴。それだけにそれぞれの企業の展開も多種多彩だ。全国展開、地元密着、コラボ商品の開発、インバウンドの獲得……。ローカルの食文化への注目の高まり、外国人観光客の増加といった世の中の流れは今後も続くことが予想される。その中で、ご当地グルメの代表格ともいえる名古屋めしが、観光都市を目指す名古屋において、いっそう存在感を高めていくことは間違いなさそうだ。

著者プロフィール

大竹敏之

名古屋在住の自称「名古屋ネタライター」。新聞、雑誌、Webなどに名古屋情報を発信する。『名古屋の喫茶店完全版』『名古屋めし』(リベラル社)、『なごやじまん』(ぴあ)など、名古屋の食や文化に関する著作多数。最新刊『名古屋の酒場』(リベラル社)が11月20日に発売。


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