“多方面外交”を進めていたのに台風が…… 幸楽苑は苦難を乗り越えて復活できるか長浜淳之介のトレンドアンテナ(4/5 ページ)

» 2019年12月25日 05時00分 公開
[長浜淳之介ITmedia]

なぜ幸楽苑は苦戦したのか

 幸楽苑は「290円ラーメン」で全国を席巻し、「390円ラーメン」の「日高屋」を運営するハイデイ日高とともにデフレの勝ち組とされていた。しかし2010年代に入り、ちょい飲みが盛んになってくると、郊外立地が中心でお酒があまり出ない幸楽苑は、駅前立地でアルコール需要に強い日高屋に既存店売り上げなどの指標で及ばなくなってきた。

 11年の東日本大震災では、1週間ほど郡山工場が操業を停止。郡山市街は太平洋沿岸から60キロほどの内陸にあって津波の直接的な被害は受けなかったが、地震そのものの影響が大きかった。一時は100店を休業していた影響なども、長期的には響いていたように思われる。ラーメン業界最大の年商は、17年以降、わずかな額ではあるが、店舗数が60近くも少ないハイデイ日高に奪われてしまっている。

主力商品の中華そば

 幸楽苑はデフレ脱却を目指し、15年には「290円ラーメン」を終了。500円を超える「司らーめん」を投入したが、消費者は値上げに納得しなかった。さらに、16年、静岡市内の店舗で発覚した“指混入ラーメン事件”を機に、さらなる顧客離れが進んで、18年3月期の決算(連結)では当期純損失32億円に転落していた。

 対策として、同社では18年4月に「新・極上中華そば(現・中華そば)」(発売時390円、税別)を投入。1カ月で150万食を突破するヒットとなった。値段がワンコイン以下になっただけでなく、麺に最高品質の小麦粉「天壇」を使用。しょうゆダレには専門のかえしじょうゆを加えて香り高くした。さらに、チャーシューも2枚から4枚に増量するといったように、味の改革に取り組んだ結果が出た。この他にも、「チョコレートらーめん」のような期間限定ラーメンを投入し、ギョーザのリニューアルなども進めた。その結果、19年3月期には当期純利益が10億円となり、1年で黒字に転換してみせた。

 直近1年の業績はどうか。働き方改革の影響を受け、夜に早帰りするビジネスパーソンが増えたため、日高屋の既存店の売り上げが苦戦しているのに対し、幸楽苑は挽回してきていたのだ。

「餃子『極』」と「ベジタブル餃子のハーフ&ハーフ」。左側の3個がベジタブル餃子

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