グローバルなベストプラクティス活用に不可欠なのは、「社員と企業文化の変革」 アフラックにおけるDXプロジェクトの道のり

「『生きる』を創る。」をブランドプロミスとするアフラックは、さらなるサービス向上を目指し顧客接点におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)を進めている。「Salesforceの標準機能を徹底活用する」という戦略のもと、自前主義を廃し短期間で大きく業務プロセスを刷新。同社はどのようにして変革を起こそうとしているのか。

» 2020年01月08日 10時00分 公開
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 ITを活用したイノベーションの実践、いわゆるデジタルトランスフォーメーションが叫ばれて久しい。しかし、思い描く姿を実現させるには、時として自社の業務プロセスをグローバルスタンダードに合わせ、ベストプラクティスを導入することが求められる。

 「1つのプラットフォーム上で、すべての顧客と代理店、アフラックを結ぶ」という方針のもと、Salesforceを導入した保険会社のアフラックは、ITを最大限活用すべく社員と企業文化の変革を掲げ、成果を上げている。ここで成功のカギの一つとなっているのが、Salesforceを“戦略的プラットフォーム”と位置づけ、業務/サービス改革を行ったことにある。

 最大限にITを活用していくための秘訣(ひけつ)は何なのか。これまでの取り組みや今後の展望について、アフラックのIT戦略をリードする二見通上席常務執行役員と、セールスフォース・ドットコムでエンタープライズ金融営業本部長を務める田村英則常務執行役員に聞いた。

アフラックのIT戦略をリードする二見通上席常務執行役員(左)と、セールスフォース・ドットコムでエンタープライズ金融営業本部長を務める田村英則常務執行役員(右)

Salesforceを「戦略的プラットフォーム」として位置づける

――アフラックでは、「デジタルを活用した最高の顧客体験の提供」を掲げ、デジタルトランスフォーメーション(DX)に取り組まれています。まずその理由をお聞かせください。

二見 当社はIT企業ではなく保険会社ですから、技術だけを追い求めているのではなく、目指しているのは、あくまでもサービスの向上です。さらなるお客さま向けサービスの向上、さらなる代理店向けサービスの向上――。この“さらなる”がポイントで、これまでも常にサービス改善に取り組んできましたが、さらに上を目指すにはDXに取り組む必要があると考えました。

 かつて日本企業では自前主義が一般的で、自社でシステム開発することが普通でした。しかし、今は技術の進化するスピードが圧倒的に早く、自前主義で競争に勝ち残ることが難しくなっています。計画から実行まで3年ないし5年もかけるような従来のタイムスパンでは、今の時代にそぐわない。そこで、クラウドプラットフォームを活用したDXを進める必要があり、Salesforceの活用を考えました。

――なるほど。DXを進めるにあたって、Salesforceを活用する方針を決められたのはなぜなのでしょうか。

二見 Salesforceを選んだのは、「グローバルスタンダードのクラウド」という点が非常に大きなポイントでした。自前主義を脱却し、スピードを早めるにはリアルタイムでバージョンアップが繰り返されるクラウドサービスが最適と考えています。我々が黙っていても、グローバルなカスタマーの声を受けて新機能が生まれ、新しいグローバルなアライアンスも増えていきますから、我々はその恩恵に預かることができる。これは自前主義の時代には到底できなかったことです。

社内に「Salesforce開発課」を持つアフラック。「社内外に、『Salesforceを重要な戦略に位置づけている』という覚悟を示すため」と二見氏

田村 とてもうれしいお言葉です。弊社では、お客さまにご利用いただいているSalesforceのシステムとまったく同じシステムを、社内の業務に活用しています。これは、自らがSalesforceを使い倒すことで、その良さを体感することができ、お客さまにも価値を伝えられると考えてのことです。手前みそですが、Salesforceは、使えば使うほど活用のレベルが高まり、業務の生産性やサービスの質を上げることができます。ですから、アフラックさまが最大限Salesforceをご活用いただいていることは、本当に素晴らしいと感じます。

二見 また当社では、7年ほど前から部分的にSalesforceを利用していましたが、3年前に改めて「戦略的プラットフォーム」として位置づけ、Salesforceを”使い倒す”覚悟をもって業務の見直しに取り組んでいます。

 そこで、まずはアフラックの社内に「Salesforce開発課」を新たに設けたのです。Salesforceの名前を冠した課を持っているのは我々くらいでしょうが、それは社内外に、「Salesforceを重要な戦略に位置づけている」という覚悟を示すためでした。

ベストプラクティスを活用すべく、カスタマイズを徹底的に排除

――Salesforceを戦略的プラットフォームとして導入されてから、具体的にどのような成果がありましたか?

二見 2018年、アフラックの顧客接点となるコンタクトセンターを再構築し、業務プロセスを刷新しました。このコンタクトセンターのシステムにSalesforceを導入しています。それまでお客さまや代理店などの情報が分散していたものを、一元的に管理できるようになり、その結果、以前よりお客さま/代理店サービスが向上し、加えて業務システム開発コストを30%程度抑えることができました。

――業務プロセスを刷新(開発)するにあたって、どのようなことを意識されていたのでしょうか。

二見 第一に、「カスタマイズの徹底的な排除」を心がけました。Salesforceはカスタマイズをして利用することもできますが、それをやっているとオンプレシステムのようにバージョンアップの都度、労力や時間、開発コストがかかってしまいます。ですから、トップダウンで徹底的にカスタマイズは排除し、標準機能のまま活用すべく業務プロセスを再構築したのです。

田村 この点も大事なところですね。自らシステムを構築してこられた文化があると、カスタマイズをしたくなるものですが、カスタマイズをしすぎると、開発スピードが落ちるため本来のSalesforceのメリットを享受できなくなるリスクが生じます。

二見 カスタマイズをしていると、Salesforceのクラウドとしての本来の良さが半減してしまいますよね。我々の場合、コンタクトセンターにSalesforceの標準機能を導入したことで、当初こそシステムに不慣れで業務が滞ることもありましたが、1年経って今は約1000人のスタッフがSalesforceのシステムを使いこなしています。ユーザーには苦労も掛けましたが、結局、カスタマイズを徹底排除してオペレーションができなくなったかというと、それはなかったわけです。失うものより得るものが多かったと言えるかと思います。

 カスタマイズを考えたくなるのは、「カスタマイズしないと業務の品質が低下してしまう」という不安によるところが大きいのではないでしょうか。しかし、事実として我々は1500万人のお客さまに対してきちんとサービスを提供できている。なおかつコンタクトセンターシステムの開発コストを削減しており、システム開発スピードも向上させています。この事実がすべてだと思います。

田村 ありがとうございます。実際に成果を上げられていることをお聞きして、うれしい気持ちです。Salesforceはお客さまが使い始めてからが本当のスタートだと考えています。システムを提供して終わりではなく、ここからうまく活用していただかなくてはならない。この点はとても大切にしていることです。

「Salesforceはお客さまが使い始めてからが本当のスタートだ」と田村氏は話す

社内の「業務改革」と、社員の「意識改革」を同時に進める

――Salesforceの導入にあたって、社内の業務プロセスも大きく変えられたとのことですが、社内のコンセンサスはどのように進められたのでしょうか。

二見 業務改革を進めた当初は、Salesforceの操作に不慣れなこともあり、不満の声が聞こえてくることもありました。この時に意識したのは、Salesforceを使うメリットを丁寧に伝えることです。特に社長の古出は、トップダウンで「このままのやり方を続けていては生き残れない」と、社員の意識改革とお客さまサービスを高める必要性を強く訴えてきました。

 やはり、誰しも変化を受け入れるのは嫌なものです。今までのやり方で10年以上も業務自体は回っていたわけですから、あえて労力をかけて変えることに躊躇(ちゅうちょ)する気持ちは理解できます。当社の社員は、幸いにして変化に対する拒否感は少なかったのですが、積極的に業務を変えていこうとするまでのモチベーションはなかった。ここをトップダウンで背中を押したことで、中からの変革が起きたのだと考えています。

――ビジネスサイドと開発チームの人事交流も行われていると聞いています。こちらも業務改革を目的としたものなのでしょうか。

二見 そうです。先ほど申し上げたSalesforce開発課は開発チームという位置づけで、基本的には技術者を集めています。ただ、いわゆるUXが重要といわれている中で、システム開発にユーザー視点を入れることは非常に重要ですから、人事交流も図っています。

 ビジネスサイドが何に困っているのかを開発チームが知ることも、逆に開発チームのアウトプットに対してビジネスサイドがフィードバックをすることも大切です。人事交流によって、この双方向のコミュニケーションを増やし、より良いシステムや業務プロセスを構築したいと考えました。

田村 アフラックさまではSalesforceの活用レベルが高く、業務変革のスピードも非常に早いと感じます。それはやはり、IT導入だけではなく企業や社員文化の変革も同時に考えられているからなのでしょう。

二見 従来から、「ITの前に保険会社の社員であれ」、そして「保険会社の社員である前に一人の消費者であれ」、ということを私は社員に強調しています。ITありきではなく、顧客視点を持つことはやはり大切です。

田村 同感です。社内でSalesforceの活用が進めば、ますますレベルの高い使い方をユーザー自ら試してくれるので、当然ながら成果につながります。アフラックさまがDXと合わせて企業文化の変革まで考えられていることは、本当に素晴らしいです。

「トラスト」を軸にした、グローバルなパートナーシップ

――今後のSalesforce活用について、展望をお聞かせください。

二見 2019年は、お客さま向けのWebサービスを、Salesforceへ移転し、刷新しています。さらに2020年には代理店向けのWebサービスも、予定を1年前倒ししてSalesforceを活用したものに刷新します。これにより、当初から我々が目標にしていた、「お客さまのタッチポイント」「代理店のタッチポイント」「社内のタッチポイント」が、すべて同じプラットフォーム上で統合されるようになりますから、これまでにないスピーディーでタイムリーな情報連携が実現します。

 例えば、お客さまがコンタクトセンターに住所変更の連絡をしたら、この情報が社内や代理店にリアルタイムに共有され、次の手続きなどのご案内がスムーズに進む。このように、連続性のあるサービスを提供できる姿を目指しています。点と点ではなく、線のサービスに変革するイメージです。

――ありがとうございます。顧客体験の側面から、新たに提供しようと考えられているアイデアはありますか?

二見 2019年、Salesforceの「Dreamforce」(サンフランシスコで開催されるセールスフォース・ドットコム主催のカンファレンス)に参加して、SalesforceのAI「Einstein」に魅力、可能性を感じました。情報の整理や選択など、ある程度の判断をAIにやってもらうことで、さらに業務効率を上げられる、そしてお客さまサービスを向上させられる可能性を感じました。例えば、お客さまの問い合わせに対して、ユニークなアバターに答えてもらうといった、新たな顧客体験を提供することができるようになるかもしれません。

田村 おっしゃるとおり、Einsteinは、業務効率化だけでなく、私たち人間が気づかない点に気づかせてくれる機能を持っています。アフラックさまのご利用者にさらに喜ばれるようなサービスの実現に貢献できるでしょう。

――最後に、今後のパートナーシップについてメッセージをお願いします。

田村 Salesforceには「信頼」「カスタマーサクセス」「イノベーション」「平等」という4つのコアバリューがあります。私はこの中でも一番は「信頼」だと思っているんです。まずは、我々が会社として信頼をいただくことがとても大事。そういった意味で、二見さまには我々をパートナーと呼んでいただいており、信頼を感じています。あとは、その信頼に対して裏切らないように、しっかりご支援させていただきたい。

二見 私は、「Salesforceの進化」イコール「アフラックの進化」と考えています。Salesforceとの連携は、当社の社員にとっても、アフラックをご利用いただくお客さまにとっても意義のあることです。

 Dreamforceに出席したとき、全世界から17万人のユーザーやパートナー企業が集まっていて、Salesforceがグローバルスタンダードなプラットフォーマーであることを改めて肌で感じました。今後、Salesforceには、広義のCRMにおける唯一無二のプラットフォーマーとなっていただくよう、これからも期待しています。

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提供:株式会社セールスフォース・ドットコム
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia ビジネスオンライン編集部/掲載内容有効期限:2020年1月20日

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