武田氏によると、デマの“発火点”とみられるのはこの午後7時台に投稿された複数のアカウントによる書き込みだ。中国語のSNSのスクリーンショットと思われる画像を張り付けており、ウェイボー(中国語版TwitterとされるSNS)で出回っていた情報をソースにしている。つまり、中国語の分かるユーザーが翻訳して紹介したことで、日本のTwitter環境がこのデマを“輸入”した可能性が高い。
では、そもそものデマの大本はどこから来たのか。マスコミや自治体向けに災害などの情報をSNSから収集・分析しているJX通信社(東京・千代田)が当時の中国語SNSの書き込みを分析したところ、発端となったスクリーンショットは中国語版LINEと言われるクローズド型のSNS、ウィーチャット発の可能性が高いという。
「現在は(中国の)ユーザーが投稿を自主的に削除しているようだが、(オープン型SNSの)ウェイボーでのコメント欄の内容などをたどると、どうも23日ごろにウィーチャットを起点として、チェーンメールのようにこのデマが出回り始めたようだ」(JX通信社の担当者)。
少なくとも、日本でデマが拡散し始める前の23日午後5時前後には、既にウェイボー上で「熱や咳のある中国人が関空から逃げ出したらしい」という内容の投稿があったとみられる。ちなみに22日時点では、この話題はウェイボーでほとんど浮上していなかったという。
同社の担当者は「(日本の)Twitterほど、ウェイボーでこの話題がバズった形跡はない。推測だが、デマはウィーチャットで情報を投稿者から受け取った知人が自分のタイムラインに再投稿する、といったチェーンメールのような流れで広まったのではないか。その後、(誰でも見られる)ウェイボーを経由して日本のTwitterで拡散された可能性がある」と分析する。
同社によると、近年のデマはLINEやウィーチャット、InstagramといったクローズドなSNSで発生するケースが増えている。「悪意を持ったデマよりも、『ウワサで聞いた情報を友達に教えたい』と考えた善意のユーザーが閉じられた場所で発信し、受け取った友人がスクリーンショットと共に『皆さん気を付けて』などとオープンなSNSで発信、拡散してしまう流れだ。近年のデマの中でも見分けにくいパターンと言える」(同社の担当者)。
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