新型肺炎で「症状出た中国人が関空から逃走」デマの真相 SNS分析で判明、“輸入型”拡散の脅威独自データから検証(3/4 ページ)

» 2020年01月30日 08時00分 公開
[服部良祐ITmedia]

 閉じられたSNSの中で荒唐無稽なデマが醸成され、Twitterで一気に拡散するという構図は日本でも実際に出現している。18年の北海道地震では、断水や携帯電話の不通といった誤情報が、やはりLINE内のやりとりから生まれ、Twitterへと広まったと推測されている。

発信源は外国語SNS、真偽の確認難しく

 加えて今回、デマが日本で広く信じられた背景として指摘されているのが、国外のSNSから発信された“輸入型”である点だ。エノルメの武田氏は「最近もSNS上のデマは問題だが、“裏”も取らず(ツイートなどで)転載される例は減少傾向にある。Twitter上のやりとりの中で情報確認がなされるからだ。しかし今回は中国語SNS発のため大本の情報をたどりにくく、ネットユーザーも裏を取る意識があまり働かずに拡散してしまった可能性がある」と分析する。

 さらに今回、デマ拡散に機能してしまったとみられるのが、一部の悪質な「ネットメディア・まとめサイト」だ。デマ関連のツイート数は24日に前日の約14倍強に膨れ上がった。大きな要因として考えられるのが、こうしたデマツイートの内容をただコピー&ペーストしただけで、取材や検証もしていない問題記事が24日にネット上にアップされ、話題になったことだ。

悪質なネットメディアがデマを“延焼”

 実際、本件デマ関連のツイート数をさらに細かく分類すると、24日のTwitterユーザー間だけの(メディア記事を引用していない)ツイート数が約2万6000件なのに比べ、メディア記事の引用ツイートも2万件超に上った。ネットメディアの記事が、デマ関連のツイート総数を2倍近く押し上げた計算になる。

photo 今回の「関空から中国人逃走」デマ関連の1月23~26日ツイート数推移。メディア記事の引用ツイート(=報道の影響あり)を含めない総数(青線グラフ)に比べ、含めた方(オレンジの線)は約2倍に(エノルメ調査)

 今回のデマを巡っては、BuzzFeed Newsや新聞社系サイトなど複数のマスメディアが関係機関に取材して正しい情報をいち早く報じ、デマ拡散防止に努めた。今回「デマ関連記事のツイート」としてカウントした中には、こうした正確なメディア報道の物も多く含まれている。

 ただ、武田氏がこの間の各メディアのデマ関連記事のTwitterやFacebookでの反響・シェア数を集計・ランキング化したところ、例えば3位には「Twitterで流れたデマ情報をそのまま垂れ流すだけ」のサイト記事が浮上した。9000件以上シェアされたこの記事には実際に直接取材をした形跡が無く、報道の体裁をとっているだけでネット情報の転載しかしていない、悪質な「まとめサイト」とみられる。

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