新型コロナウイルス発生で激震のクルーズ業界 日本に寄港する各社の対応は?クルーズ市場最前線(2/3 ページ)

» 2020年02月05日 11時38分 公開
[長浜和也ITmedia]

プリンセス・クルーズ

所属するクルーズ客船の1隻で日本発着クルーズで日本でもなじみ深い「ダイヤモンド・プリンセス」

 プリンセス・クルーズは、2月3日時点における対策を次のように述べている(キュナードラインとプリンセス・クルーズはともにカーニバルクルーズに所属するクループ企業であるため、対応策で共通する部分がある)。

 まず、米国疾病対策予防センター(CDC)および世界保健機関(WHO)と連携して、社内の医療専門部署による船舶のスクリーニング検査、予防、管理措置を全ての所属客船で実施している。

 新型コロナウイルスの対策としては、過去14日間に中国本土(湖北省を含む。ただし、香港、マカオ、台湾は除く)から、または中国本土を経由して旅行した人の上船を断っている。さらに、中国本土からの乗員は、追って通知があるまで船での乗務はせず待機となった。中国本土経由のフライトで船上勤務を予定していた乗務員は便を変更したという。

 上船前には全ての船客に病気、または病気の症状に対する報告を義務付け、呼吸器症状または発熱症状がある船客には、体温チェックを含む健康診断を実施する。

 船内で発熱および呼吸器疾患の症状がある船客が船内メディカル・センターを訪れた場合は、全船客に対してコロナウイルスの医療スクリーニング検査を実施し、発熱および呼吸器疾患などの症状、新型コロナウイルス感染が疑われる船客がいる場合、各国の保健当局に報告する(今回の横浜における事例は、この対策が機能していることを示している)。また、船内では徹底した清掃および衛生管理に加えて、追加の船内消毒を実施するとしている。

コスタクルーズ

こちらも早期から日本発着クルーズに参入している「コスタ ネオロマンチカ」

 所属する全ての客船で予防的な保険衛生上の安全対策を施した上で、20年1月25日から2月6日までの間、中国の港を出港する全ての客船において航海を中止した。「予防的な保険衛生上の安全対策」では、中国の国家衛生健康委員会と医療専門家の提示する、公共の場所と施設における新型コロナウイルス肺炎対策の殺菌と消毒の要件に完全に合致するように指導しているとしている。

 また、感染が広がり始めた初期段階から、港での体温検査の強化、武漢および湖北省に滞在、または居住していた旅行者の受け入れの中止、船内での消毒頻度の増加などを感染対策として実施している。乗組員全員の体温を運航停止後も毎日測定して全員の健康状態の把握に努めているという。

 なお、中国の港に到着した客船は、体温検査を全ての船客と乗員で実施している。これまでに体温の高かった船客を対象に、現地の疾病管理センターで再検査を実施したが、全て陰性だったという。また、湖北省を行き来したり湖北省の人と接触した、湖北省に居住していた船客については、中国の地方政府によって集団検疫と医学的観察を実施している。

 アジア海域のクルーズ運航を担当するコスタクルーズ アジアでは、全ての客船でクルーズをキャンセルした上で、船内の殺菌、除菌作業を実施している。なお、直近の検査で船客、乗員の全てで感染例はなかったという。

 また、欧州海域のクルーズを担当するコスタクルーズヨーロッパでは、体調不良の船客が発生して寄港地での下船ができなかった「コスタ スメラルダ」において、診察の結果、新型コロナウイルスの感染ではなかったことが判明した後、航路を変更した上でクルーズを続行した。

 なお、船客と乗員のモニタリングは上船中は継続して実施しており、何かしらの予兆があった場合は、早急に対応できる体制を整えている。また、CLIA(Cruise Lines International Association)が現在策定作業を進めている新型コロナウイルス対応手順に対しても、実行に向けた調整中であることを明らかにした。

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