カゴメが築く「ファンを夢中にさせる」戦略 わずか2.5%のユーザーに注目したワケ新商品開発にも効果(2/4 ページ)

» 2020年03月31日 07時00分 公開
[加納由希絵ITmedia]

アクション率は10%以上、活発なコミュニティーづくり

 「&KAGOME」にはどのようなコンテンツがあるのか。サイト内には、食に関するテーマで気軽に交流できる掲示板「トークルーム」、レシピやアレンジ提案を投稿する「レシピのーと」、カゴメ商品に関する人気投票などを行う「どれにしようかな」など、ユーザーと運営側が共に発信するコンテンツが並ぶ。会員向けに抽選でトマトの苗をプレゼントする企画を行っていることから、トマトを育てている人が集う「トマコミ」というコミュニティーもある。

「&KAGOME」のコンテンツは、投票企画「どれにしようかな」などがある(出典:&KAGOME

 開設当初はなかなか会員が増えなかったが、トマトの苗のプレゼント企画や商品モニターの募集などの効果もあって、16年10月に1万人を突破。現在は3万1000人となっているが、「会員を増やすことが目的ではない」(水野氏)という。

 「&KAGOME」のKPIは、会員数ではなく「アクション率」だ。アクション率とは、投票やコメント、「いいね」などのアクションをした人の割合。「&KAGOME」の月間のアクション率は10〜15%を維持しており、活発なコミュニティーとなっている。

 もちろん、会員の自主性に任せるだけではこのようなサイトにはならない。担当部署だけでなく、マーケティング支援を手掛けるイーライフ(東京都渋谷区)のスタッフの手を借りて、運営側による書き込みや、投稿の監視、サイト内設定などの運営体制を構築。さらに、品質保証、法務、お客さま相談室など社内の部署とも連携して運営にあたっている。

 そのような徹底した管理体制で「炎上」のリスク低減にも努めている。食品や健康に関わる不正確な表現を発信しないことはもちろん、ユーザーの投稿にそういった記述があった場合も、コメント主に連絡した上で、直ちに非表示にしている。炎上してしまった場合の想定もしているが、現在のところ、「これまでに大きなトラブルはゼロ」(水野氏)だという。

 サイト運営によって、カゴメのファンの特徴も見えてきた。会員は女性が7割。年齢は主に30代から60代まで幅広く分布している。8割がカゴメ商品を10年以上愛用するユーザーだ。また、「まじめで内向的」「奥ゆかしい」人が多く、SNSで積極的に発信する人は少ないが、身近な人には“カゴメ愛”を熱く話してくれるとか。そのためか、「&KAGOME」のサイトにはどこか温かい雰囲気が漂っている。

 こういったファンとの交流は、サイト内だけにとどまらない。実際の商品開発やブランド構築に“ファンの声”が生かされた事例も増えている。

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