なぜ日本はコロナ検査に消極的なのか(1/4 ページ)

» 2020年04月08日 08時06分 公開
[日沖博道INSIGHT NOW!]
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日沖博道氏のプロフィール:

 パスファインダーズ社長。30年にわたる戦略・業務コンサルティングの経験と実績を基に、新規事業・新市場進出を中心とした戦略策定と、「空回りしない」業務改革を支援。日本ユニシス、アーサー・D・リトル等出身。一橋大学経済学部、テキサス大学オースティン校経営大学院卒。日本BPM協会アドバイザー。


 ついに日本でも大都市圏で緊急事態宣言が出される事態に至った。残念ながら新型コロナウイルスの治療法が確立していない中で、感染拡大を防ぐ唯一の方法は患者およびその濃厚接触者の隔離である。したがって効果的なウイルス封じ込め対策は「クラスター把握→感染者隔離&行動履歴追跡→濃厚接触者の検査」だ。欧米の感染専門家の合言葉は”Test, test and test”(とにかく検査せよ)で、とにかく感染が疑われる人を片っ端から検査することがすべての始まりなのだ。

 お隣・韓国は、感染者数は早い時期から有数の多さだが、その検査の徹底度とフォロー体制の充実(感染者の訪問場所の公表など)により「模範的な対策」と世界からは高い評価を受けている。ドライブスルー検査まで実施しているのだから、悔しいけれど大したものだ。

 そんな中、先進国の中で唯一、日本は検査の実施に関してずっと消極的だった。有力メーカーへのPCR検査機の生産働き掛けにも政府は及び腰で、民間で進めていた幾つかの簡易検査キットの採用検討にも厚労省は消極的なままだ。

 保険適用を受けて全国800カ所ほどの帰国者・接触者外来にまで拡大したとはいえ、PCR検査が実施できる機関はまだまだ限られており、しかも診療所や小さな病院経由で保健所に検査依頼をしても大方は断られるそうだ。

 ではもしあなたが自らの感染を強く疑うなら、どういうルートならよいのだろうか。いきなり医療機関に飛び込むのではなく、各地の新型コロナ受診相談窓口(帰国者・接触者電話相談センター)に電話相談すれば、症状・背景によって判断されるので、その指示に従う必要がある。

 最近の渡航歴や症状などから感染疑いのある場合、帰国者・接触者専門の外来にて診断され、そこで感染疑いが濃厚となれば当外来の医師から保健所に連絡され、保健所の判断で初めて検査が実施される、という繁雑なプロセスをたどる。

 言い換えればこの途中のどこかで「渡航歴もないので感染疑いが濃くはない」とか「症状が軽いので、後回しにしても大丈夫だ」などと判断されれば、検査は受けさせてもらえない。実際、感染経路が分からない状況が増えた今、こういった理由で検査を受けられないという苦情が溢れているし、一種の「たらい回し」に遭った挙句、検査・入院になかなか至らずに結果的に重症化してしまったという訴えも目にする。

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