静岡県の川勝平太知事は、3月13日の定例記者会見で、リニア中央新幹線の南アルプストンネル工事(うち静岡工区は約8.9キロ)に関して、またまた「いちゃもん」を付けた。
知事就任前の川勝氏は、国土審議会の委員として「リニア推進派」だった。
それが知事に就任するや、「この(リニア新幹線の)工事によって、地域振興なり地域のメリットがあるかについて基本的な考えのないまま勝手にトンネルを掘りなさんな」(2017年10月10日定例記者会見)と見返りを要求し、具体的な見返り案としては、「(リニア新駅の建設費用)全体の平均ぐらいは、額(約800億円とも)としては目安になるんじゃないかと思いますね」(2019年6月11日定例記者会見)と言及。それが無理であれば、東海道新幹線に富士山静岡空港駅の新設や、「のぞみ」の静岡駅や浜松駅の停車を求めているとされる。
これらが、JR東海にことごとく拒否されると、今度は国土交通省が、静岡県とJR東海の仲介役となって設置した有識者会議の人選について、提案した5人の河川工学の専門家のうちの1人を、「中立性に疑問がある」として、独自に委員を公募すると言い出したのだ。
この委員公募を知った慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科の岸博幸教授は、元経済産業省官僚で政府の「IT戦略本部」にもかかわった経験から、「有識者会議を公募するなんて前代未聞のこと」「因縁をつけまくって、来年の知事選まで問題を引き延ばそうとする“稚拙な悪手”」と語気を強めて批判した。
──今回、静岡県が国交省の有識者会議委員の人選に反対し、独自に委員を公募したことについて、どう思いますか。
私が出演している静岡朝日テレビの番組で知る限りでは、国交省が人選した有識者会議の委員に、トンネル工事を請け負ったゼネコン(大成建設)の社外監査役が含まれていることに、静岡県側が反発したとのことでした。
静岡県は、ゼネコンの「社外監査役」という肩書に噛(か)みついているようですが、そもそも社外監査役というのは、企業にベッタリではありません。企業内の仕事を監視・監査して、問題があったときに指摘をするのが役目です。静岡県が言うような、「中立性を保てない」人ではありません。
国は有識者としていろいろな立場の人を入れます。静岡県の有識者会議の委員も専門家会議のメンバーに入っているとのことだったので、その県のメンバーが、静岡県を代表して利害をいえるはずですよね。
それに、有識者を選ぶ場合には、静岡県が組織としてちゃんと把握している人物を推薦するのなら分かる。ところが、国の会議のメンバーを静岡県が自薦他薦を問わず公募するというのは、どの程度、有識者としての資格があるかどうか、分からないじゃないですか。こんなのは前代未聞ですよ。
前例のないことを、あえてやる目的は何なのか。その可能性としては、前例がないから目立ちたいと思ったのか、または、静岡県内の有識者を県が把握していないから公募したのか、そのどちらかだと思います。でも、どちらにしても「愚策」ですよね。行政の対応としては非常識。国にケンカを売るのは良いのですが、もうちょっと正論で、理論立ててやらないと。まるで、我を通す子どもです。こんな愚策は認められません。
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